sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

続・高麗青磁への誘い10選 申載天F/青磁象嵌雲鶴菊花文高杯


 口縁はいくらか外側に反りを見せて広く、碗形に曲線を描いて細い脚につながる。把手にあたる脚はゆるやかに外反して、高台には縁取りがついており、器全体の支えを確かなものとしている。

 内側面の口辺には3条の白線をまわし、点状の雲とその間に飛翔する4羽の鶴を白黒象嵌でびっしり嵌め込んである。

 外側面の口辺と脚の下方に2条の白線がまわされ、三方に菊花枝の丸文があり、その間には白象嵌の唐草文が巡らされ、脚には4本の縦の筋を入れ、その間に立菊文が施されている。

 器全面に澄んだ美しい淡青緑色の釉薬がむらなく施され、とくに内側面は深い釉色を呈している。このような器形の酒杯もまた、まれである。

 この高杯が私の手元にあった頃、杯に酒を満たして緑酒に映る雲と鶴に見入れば高麗500年の興亡の歴史が胸中を去来したものだった。(12世紀、高さ9.5センチ)