特集/18全大会
総聯は第18回全体大会で、在日朝鮮人運動を新たな段階へと発展させるには、まず在日同胞1世が築いた愛国の伝統を若い世代にしっかりと継承することが緊要だと指摘した。大会で討論した21人の代議員らは、17期の3年間の活動について語ったが、そこには運動の進路を探るうえで貴重な教訓が込められている。民族教育や祖国支援などの大衆運動の経験に関する討論を通して、組織と同胞らはいかにして力を発揮してきたかを見た。(賢)
◎討論から
「同胞の中から答えを得た」/「1世の意志今こそ継承」
17全大会以降の3年間は、総聯はじまって以来の厳しい試練の時期だったと言える。
祖国は予断を許さない激動の国際情勢のうえに、たび重なる自然災害によって深い傷を負い、形容し難い難局を乗り切らねばならなかった。日本では、ただでさえ、出口の見えない不況によって先行きの不安を募らせていた同胞を、反共和国、反総聯キャンペーンの嵐がおそった。
しかしこうした逆境の中でも、運動は決して停滞しなかった。
中でも、同胞らが大衆運動で集めた「100億円を超える莫大な予算をもって、各地の朝鮮学校で校舎や寄宿舎、体育館などが相次いで新築された奇跡のような事実」(金守鎮・朝鮮大学校第1副学長)は象徴的だ。
こうした運動の原動力は、1世から脈々と受け継がれて来た祖国と民族を思う心に他ならない。
東京朝鮮中高級学校新校舎建設委員会の洪誠一委員長は討論で、重責を担った際に「時期が悪すぎないか、若い同胞の支持を得られるか」といった不安に頭を悩ませたと話した。
その不安を打ち消したのは、「1世は果たして金が余っていたから学校を建てたのか? 民族の心を育む教育を何ものにも代え難い生命線と考えたからではなかったか。今こそ2、3世がその意志を受け継ぎ、輝かせる時が来たのではないか」との思いだったという。
また、「オモニサラン運動」を繰り広げるなどして、数回にわたり大規模な支援物資を、祖国の子供たちに届けた女性同盟をはじめ、各層の同胞らが祖国の水害復興支援運動を粘り強く行ったことは、「祖国が試練に直面している今こそ、私たちが祖国を支援すべき」(権英淑・女性同盟栃木県本部委員長)という、愛国心の表れだった。
◇◇
この間に、これまでの3倍にあたる120人の同胞学生とつながりを持つようになった留学同東海の安徳守委員長は、「同化、帰化する同胞学生が増えている反面、民族性を大切に思い、同胞とのつながりを深めたがっている同胞も多いこと、彼らは後押しさえあれば、いつでも覚醒できることを実感した。問題は学生たちの志向とニーズ、特性に合った活動を、専従である自分がいかに進めて行くかにかかっている」と、実感を込めて討論した。
総聯はこの間、複雑な情勢や世代交替が進む状況下で、いつしか潜在化してしまった同胞らの民族を思う心をいかに呼び覚ますかを追求してきた。それは、組織が同胞の信頼を勝ち取って行く過程でもあった。
阪神・淡路大震災の後に出て来た、被災地の同胞らの複雑かつ多様な悩みに対処しようと、昨年5月に設立された兵庫同胞生活相談センターの趙富雄所長は、支部を通して同胞とつながることを原則にして活動した。その理由は、「私は経験を通じ、どんな些細なものでも、組織が同胞の抱える問題を解決すればその同胞は必ず総聯を信じ、支持するようになると確信していた。…悩みが解決されたことを喜ぶ同胞の姿、かれらが支部を財政的に支援するようになる姿を通じ、支部の活動家たちが同胞の生活と権利を守る活動の重要性を実践的に認識」させることにあった。
支部活動家たちも、「商売も忙しいだろうが、今、自分たちが動かねばあとに続く同胞らはどうなるのか。今後はだれが学校や支部を守るのか。同胞の良心にこう訴えながら、朝の4時、5時まで話し合い、時には言い合いもした。しかし同時に、焼肉店を営むその同胞の仕事の手助けになろうとも努めた」(孫智正・総聯京都府西南支部委員長)というように文字通り体当たりの姿勢で大衆の結束に取り組んだ。
学校建設や水害支援といった成果も、こうした活動の積み重ねの中で、組織と同胞が信頼で結び付いてこそ可能だったと言える。
17期に総聯が得た教訓は、総聯東京・足立支部本木6分会の鄭明義分会長が語った「同胞らの中に入れば、必ず答を得られる」との言葉に集約されている。
今後も同胞らの志向と力に依拠しながら、在日朝鮮人の運命を自主的に切り拓いていくことこそが、1世が築いた伝統を継承し、21世紀への展望を開くことにつながる。
◎日本各界代表のあいさつ
総聯第18回全体大会では、自民党の森喜朗総務会長をはじめ、日本各界の代表が祝賀と連帯のあいさつを述べた。その要旨は次のとおり。(順不同、敬称略、見出し・文責は編集部)
「近い燐国」目指し歩進める
森喜朗(自由民主党総務会長)
昨年11月、与党3党訪朝団の責任団長として皆様の祖国を訪問し、朴成哲副主席、金容淳書記をはじめ指導者の皆様と忌たんのない話し合いができた。両国の将来にとってまことに意義深いものであった。
21世紀に向けた日朝の新たな関係の構築は、文字通り「近い隣国」への歩を進めることだ。共和国が金正日総書記のリーダーシップのもと、世界の平和と安定に貢献され、わが国との関係にも建設的に取り組まれることを強く期待する。
歴史の歯車を前に回したい
伊藤茂(社会民主党幹事長)
金正日総書記を中心にして、困難を乗り越える新たな発展への確かな歩みを進めておられることに深い敬意を表する。アジアも朝鮮も新しい進展の時にあり、歴史の流れと情勢はきわめて有利に展開している。その歯車を前に回すよう力を尽くし、その流れに逆行する、日米安保条約の運用指針の改訂やガイドライン立法など、朝鮮半島有事に備えるという動きなどに毅然と対応していきたい。
双方の努力で友好関係を
海江田万里(民主党国際局長)
私たちは朝鮮半島が最重要外交地域の一つであるとの認識を持っており、共和国とわが国の間で正式な外交関係が開かれることを希求するものである。両国は唇歯の関係であり、お互いが相携えて友好関係を結んでいかなければならないことは私たちの共通の認識であるので、双方の努力で解決できると思う。
本大会を契機に日朝友好が促進され、総聯の活動がさらに発展するよう、心からお祈りしたい。
禍い福に転じ統一へ前進
林亮勝(日朝文化交流協会理事長)
私は共和国との文化交流を通じ、その文化と優れた民族性を学んでいる。また多くの友人を得ることで、その優秀さをよく承知している。禍いを福に転じ、悲願である平和的な祖国統一に一歩ずつ前進していることに大きな敬意を表する。
私たちができることはほんのわずかであるが、これまで以上に日朝友好のために努力したい。明るい明日のために力になれればと願っている。
民族教育の権利確立に尽力
津和慶子(日本婦人会議議長)
私たちは、地域の中で日本人1人ひとりに訴えかけながら、日本人の誤った朝鮮観を払拭し、民族教育の権利確立のために努力することで、日朝の真の友好と連帯のために活動してきた。この秋に開催する「アジアの平和と女性の役割」シンポジウムでは、南北朝鮮の和解と日本との友好連帯を進めたい。日弁連が勧告で指摘した民族教育の当然の権利を確立するために、一層力を尽くしたい。
共に21世紀を良い時代に
星野進保(総合研究開発機構理事長)
総聯には日頃から、共和国の社会科学者との研究交流において支援を受けている。そうした交流を重視したのは、チュチェ思想が21世紀の人類にとって平和・共生・発展の思想になっていくと直感したからだ。チュチェ思想は人間が主体的、創造的に、皆で一緒に世界を発展させて行く思想だ。総聯の人たちには共和国の発展を担うという大事な仕事があるが、同時に世界にも目を向け、ともに21世紀を良い時代に築いて欲しい。
いたわり合いながら共生を
大田秀三(日朝仏教徒親善協会会長)
仏陀の教えは生きとし生けるものの平安と幸福の達成に寄与することだ。そのために相ともに思いやりの気持ちをもち、いたわり合いながら共生していかねばならない。チュチェ思想の自主・平和・中立の「信(まこと)」の心は、全人類の幸せを願う自由・平等・愛を根幹とする世界の宗教に共通する精神だ。共和国の仏教徒ならびに総聯と連帯を強め、ともにアジアの安定、世界平和のために活動したい。
基本的人権の擁護に尽力
床井茂(在日朝鮮人人権セミナー実行委員長)
日本国内の在日朝鮮人の人権状況は、着実に前進していると思う。今年2月、日本弁護士連合会は日本政府に対し、朝鮮学校への学校教育法第1条校なみの扱いを求める勧告を提出した。先に出された朝鮮高校の高校体育連盟主催の大会への参加を求める勧告書は実現をみ、大会での朝鮮高校生の活躍がマスコミを賑わした。今後も在日朝鮮人の基本的人権の擁護や日朝国交樹立のために尽力したい。
朝鮮人民のたたかいは大きな励み
佐久川政一(日本チュチェ思想研究会全国連絡会会長)
今や反帝自主、平和と友好のたたかいは時代のすう勢だが、生き残りをかける帝国主義支配勢力は、反動策動を一層強化し、世界の一極支配を画策している。
金正日総書記のもとに一心団結し、チュチェ偉業完成を目指す朝鮮人民のたたかいは、日本を含め、世界各地の反帝自主のたたかいに大きな励みになっている。私たちはチュチェの旗をともに掲げる同志として今後もともにたたかう決意だ。
朝鮮人民の勝利を確信
若林X(朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会事務局長)
国際社会主義市場の崩壊に続いた3年続きの自然災害だけでなく、帝国主義の経済封鎖に直面している共和国の現在の苦難は、抗日武装闘争時代によく似ている。当時、金日成将軍の周りに固く団結して苦難を乗り越え、遂に勝利した朝鮮人民は今、新たな苦難の時代に金正日総書記を領袖とし、一心団結して必死にたたかっている。朝鮮人民の最後の勝利を信じ、ともにたたかう決意だ。