「書簡」以後――組織の姿(中)
多彩さ、独創性を尊重/若い世代捉えた青商会
時代の要求
世代交替が進む在日同胞社会では90年代に入り、3、4世の民族離れ、組織離れが深刻な問題として浮上した。
彼らの在日朝鮮人運動への参加を促し、その活力を取り入れることなしには民族の代を継いでいくことは不可能だとする危機感が急速に広がり、20〜30代の受け皿となる新たなネットワークが求められた。
それが、金正日総書記が総聯と在日同胞に書簡「在日朝鮮人運動を新たな高い段階へと発展させるために」を送ってから4ヵ月後の1995年9月に結成された、在日本朝鮮青年商工会(青商会)だ。
埋もれていただけ
中央組織結成から3年、青商会は各都道府県に31の地方組織と約60の地域組織を結成し、全国的なネットワークを築いた。役員は約600人、会員は約3000人に上る。
年に1度、全国規模の「ウリ民族フォーラム」を開催。日常的には地方、地域の現状を踏まえた活動を行っている。とくに民族教育をバックアップする活動に力を注いでいるのが特徴だ。企業人としての素養を高めるための経営セミナーや、家族単位で親睦を深めるための行事も盛んだ。
3、4世に当たる20〜30代の若い同胞たちが、社会とつながることで精神的な充実感を得る場を求めていたこと、そしてその「つながり」の共通項(求心力)が、世代は変わってもやはり在日同胞=民族であったことが、この間の活動で証明されたかたちだ。
「とかく民族離れ、組織離れが指摘される世代だが、ただ活躍の場がなく多くの人が埋もれていただけだ。青商会の存在意義はそこにある」(青商会中央・宋元進直前会長)。
徹底的に議論
組織離れ、民族離れの背景には、「政治色」を敬遠し、「お仕着せ」を好まず独自性の発揮を重視する傾向があるとの指摘がある。
青商会はこの間、こうした問題を避けず、逆に真正面から向かい合うことで、着実に輪を広げて来た。
総聯の正式な傘下団体であることについては、運動に「ある種の転換、変革を起こすことへの期待が込められていると理解」(尹太・大阪府青商会会長)し、斬新な活動を目指した。その結果生まれた、ウリ民族フォーラムなどの成功は、「在日同胞社会の再構築という具体的で政治的な目的を持ってこそ得られたものだ」(韓廣希・山口県青商会直前会長)。
基礎をなしているのは、若い同胞たちが、自ら抱く疑問や問題意識をもとに徹底的に議論を重ねることで、個々の会員の自発的な行動を促すという運動の原則だ。
゙吉守会長は、次のように語る。
「民族性を守りたいという考えは、在日同胞社会の中で、政見や組織の所属を超えて存在する。同胞社会の今後を担う世代が青商会を通してネットワークを結び、民族性を守るという目的のために一致して若い力を発揮して行けば、その機運を全同胞的に高めることも可能ではないか」
多彩な意見を取り入れて運動の間口を広げ、民族の継承を目指す青商会の成否如何は、在日朝鮮人運動の将来を左右するものだと言っても過言ではない。(賢)