朝青東京北部ブロック合同ミュージカル「ピョンジ(手紙)―私たちの思い」
民族と組織の大切さ訴え/若いパワー、同胞の心つかむ
朝青東京・北、豊島、板橋、練馬の各支部、朝銀東京・池袋、赤羽班朝青合同ミュージカル「ピョンジ(手紙)―私たちの思い」が1日、練馬区立練馬文化センターで行われ、600余人が観賞した。結婚問題を軸に、民族性を守っていく問題に正面から取り組んだ意欲作。朝青らしい新鮮なアイデアとパワー、真剣さが、「素人の手作り」による稚拙さを補って余りある勢いを生み、一世同胞ら観客の心をつかんだ。カーテンコールの時、「朝青トンムたち最高!」と、立ち上がって拍手していた李英愛さん(64、板橋区居住)は「民族の心を訴える内容に感動した。こんな若者たちがいれば安心だ」と涙ぐみながら語っていた。(東)
すべてオリジナル
50年後、老夫婦となった主人公2人、ファミとヨンスが朝青時代を回想する形で話は進められる。恋人だった2人は結婚観の違いから一度は喧嘩別れする。日本人男性とつきあい民族から逃げようとするファミ。しかし、本当に困った時に助けてくれたのは朝青のトンムたちだった。朝鮮人としての自分と向き合う大切さを熱く訴えたヨンスの手紙がファミを揺り動かし、2人は結ばれる。
民族性を守り、自分1人のためでなく同胞たちのために生きることの大切さ、そのためにある組織の重要性が一貫したテーマだ。
ミュージカルと名付けただけあって、主人公2人が心情を歌い上げるのはもちろん、要所要所で合唱とバイオリンの独奏が挿入され雰囲気を盛り上げた。また同胞大祝典やファミの家が火事になるシーンでは舞踊が効果的に取り入れられたり、劇中での朝青班のビデオ学習という形で実際にビデオが上映されるなど、演出も工夫に富んでいた。
脚本・演出を担当したのは板橋支部の李真弓宣伝部長(24)。劇中歌の作詞作曲、舞踊の振り付けもすべてオリジナルだ。
アボジの遺言
主人公ファミを熱演した金愛香さん(21、学生、板橋)とその姉、ファソン役を演じた金聖愛さん(19、同)姉妹は練習期間中に父親を病気で亡くしたが、途中で降りずに最後まで舞台を務め上げた。愛香さんは「朝鮮人として立派に生きろというのがアボジの遺言だった。公演に出ることは、アボジの気持ちをみんなに伝えることだと思った」と話していた。
「僕たち朝青の力を見てほしい」との思いで舞台に上がったと語るのは主人公ヨンス役の李憲栄さん(22、東京都商工会、豊島)。ファミの母親役を演じた林佳那さん(18、北)は「私たちは1世同胞の苦労を直接知ることはできないが、公演を通じてそれを学ぶことができた。公演を見てくれた人たちに、これからは私たち若い世代が頑張るんだという思いを伝えられたと思う」と話していた。
「生きた言葉」に
同地区では3年前にも合同で演劇公演を行った。今でも懐かしがるトンムが多く、17期が終わるのを前にもう一度やってみようかという話が出たのが昨年11月のこと。今年2月に実行委員会が結成された。
「1、2世が築いた財産を僕たちが継承、発展させようというテーマで、組織の未来を描ける内容にしよう」(実行委の李荘一委員長=板橋支部非専従副委員長、朝銀、30)と話し合いを重ね、何度も書き直した末に脚本を完成させ、3月中旬から練習を始めた。
出演者は東京中高の教室などで週5回、夜7時から10時まで練習。最後の2週間は連日深夜まで練習した。またこの間、朝大教員による民族性に関する講義と、結婚相談センターの職員による同胞結婚に関する講義を聞き、意見交換もした。こうした努力が、台詞を観衆の心に届く「生きた言葉」にしたのだ。
一方、実行委員らは、大・小道具作り、チケット販売、広告集めに奔走した。「不況の今、チケットを売り、広告をもらうのは楽ではなかったが、同胞たちの若い世代に対する期待をひしひしと感じる日々だった」と李実行委員長は語る。
公演を成功裏に終え、「盛り上がったこの勢いを今後の活動につなげること」(板橋支部・李宣伝部長)が、各支部共通の課題となる。しかし、公演の準備過程で「各支部で、18期の柱となる人材が育った」(南在成同委員長)。「このトンムたちが柱になってくれれば、きっとどの支部ももっと賑わうはず。それは僕たちにかかっている」(李実行委員長)。