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時事・解説/朝米関係の現状


 ワシントン発の外電によると、今週中にニューヨークで朝米実務レベル協議が開かれるという。3月にジュネーブで開かれた第2回4者会談以後、初めての朝米接触だ。朝米関係は、1994年10月の基本合意文に基づき軽水炉建設と国交正常化に向けた信頼の醸成、また朝鮮半島での新たな平和保障システムの樹立という大きなテーマを持って進んでいる。現状をまとめた。(基)

 

●基本合意

遅れる軽水炉建設/義務履行に不誠実な米国

 朝米基本合意の履行状況だが、軽水炉建設問題は提供協定締結(95年12月)から2年以上が過ぎ、昨年8月に現地で起工式は行われたが、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)内部の事情を理由に大きな進展は見せていない。

 基本合意によると、共和国が黒鉛減速炉と諸関連施設を凍結する一方で、米国は2003年までに軽水炉2基を共和国に提供することになっている。1月に寧辺の関連施設を訪れたカール・レビン米上院議員が、「燃料棒の処理はジュネーブ核合意の通りに履行されている」と語っているように、共和国は黒鉛減速炉を凍結している。

 しかし米国主導のKEDOが推進している軽水炉建設は、南朝鮮の経済危機や日本の出し渋りなどにより全般的な費用分担については決まっていない。さらに軽水炉が完成するまでの代用エネルギーとして、毎年50万トン(約6000万〜6500万ドル)の重油を共和国に供給しなければならないが、米議会が今年承認した予算は3000万ドルにすぎず、米国は関係国に残りの負担を迫っている。

 米国がすべての責任を負って事業を推進することは、朝米共同報道文(95年6月)にはっきりと明記されている。米国が基本合意の義務を誠実に履行しないのであるならば、自立的な原子力エネルギー工業を継続するなど「元々計画したようにしていこう」(3月6日付外交部談話)というのが共和国の立場だ。

 また、米国は合意文調印後3年以上が過ぎた現在も、経済制裁緩和と関連した実質的な措置を取っていない。

 制裁緩和の問題では、共和国は合意文調印から3ヵ月以内とした公約に沿って95年1月、米国に対する一切の経済障壁を撤廃した。しかし米国は公約から2年が経っても、全面解除には至っていない。それどころか制裁緩和の実施について、朝米ミサイル会談の進展具合などを前提条件に示し、政治カード化しようとしている。

 一方、朝米は第2回4者会談3日前の3月13日、ベルリン会談で「ミサイル会談の再開で合意」(日本経済新聞同月14日付)した。米国は核と同様ミサイル問題も軍事戦略の柱として掲げており、核問題から朝米基本合意が生まれたように、ミサイル問題で進展を見るためには、米国のそれなりの見返りが必要だ。

 

●軍縮問題

米軍撤収論議は不可欠/平壌やニューヨークで頻繁に接触

 共和国は長期にわたって停戦協定の平和協定への転換を米国に求めてきた。共和国はクリントン米大統領が朝鮮半島の「恒久的平和協定を実現する過程を始めるためのもの」として、96年4月に提案した4者会談に参加している。

 会談は昨年12月と今年3月の2回行われたが、焦点は朝鮮半島の平和と安定をいかに構築していくかである。共和国は会談目的に沿って米軍撤収と朝米平和協定締結を議題にするよう主張した。しかし米国は四者会談予備会談時から、本会談では「いかなる論議も自由にできる」と語っていたにもかかわらず、本会談で共和国の提案を拒否した。

 その一方、米国の元・現議員らが相次いで訪朝し、朝鮮人民軍将官らと接触した。昨年7月にはナン前上院軍事委委員長一行、今年1月にはカール・レビン上院議員が訪朝し、朝鮮人民軍板門店代表部代表の李賛馥中将と会っている。とくにレビン議員は李中将と金桂寛外交部副部長らとの会談で、「朝米関係改善と朝米の軍首脳級会談開催を求められた」(日本経済新聞1月19日付)。

 共和国側も昨年末に元軍縮平和研究所室長の李衡哲外交部米国局長が国連大使に就任し、軍縮問題で米側との接触を強めている。李根国連次席大使もニューヨークで「毎日のように」米側と接触を行っている(時事ジャーナル3月12日号)。

 こうした朝米接触が進む中、朝米ベルリン会談が行われた3月13日、板門店では南朝鮮駐屯国連軍司令部と共和国による秘書長(大佐級)間の実務協議が開かれ、「将軍級(准将以上)会談の開催で基本合意」(朝日新聞3月15日付)した。こういった一連の接触では当然、米軍撤収、平和協定締結問題も取り上げられたものと思われる。

 10数回訪朝しているケネス・キノネス米国平和研究所客員研究員(前国務省共和国分析官)は、@現在の休戦状態を恒久的な平和状態へ転換させ A国連司令部は国連安全保障理事会によって権限が与えられているわけではないことを直視し B将来、在韓米軍は撤退されるべき――と語っている(外交フォーラム4月号)。

 つまり米国は少なくとも米軍の撤退、あるいは縮小についてのスケジュールを明らかにし、共和国と敵対する存在としての米軍ではないことを示すべきだ。

 いずれにしても朝鮮半島の平和と安定を保障するためには、南朝鮮駐屯米軍問題の論議は不可欠である。