sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

「従軍慰安婦」問題/「国民基金」はすりかえ


 「従軍慰安婦」問題が、最近ジュネーブで行われた国連人権委員会で再び論議され、国際舞台では日本に対する国家賠償への追及の声は未だ止んでいないことを改めて見せつけた。また21日、東京・霞ヶ関の弁護士会館では「慰安婦」問題の早期解決を求める国際フォーラムが行われ、参加者らは人権委員会での報告を踏まえて、真相究明を求めるとともに95年に日本政府が打ち出した「女性のためのアジア平和国民基金」(国民基金)では「従軍慰安婦」問題の解決は無理だとして、今後、日本政府に調査会立法の措置を求めていくべきだとの意見で一致した。(嶺)

   ◇    ◇

 先の、国連人権委員会に参加した前田朗・東京造形大学助教授によると、「従軍慰安婦」問題で、国際世論の日本への追及の声がトーンダウンしたとの日本の報道は適切ではないとフォーラムで明らかにした。

 日本の報道では、国連人権委員会のクマラスワミ特別報告官の「女性に対する暴力」に関する報告書で日本の国民基金などの対応を「評価」したことが強調されていた。

 しかし、クマラスワミ特別報告官は、すでに96年に6項目からなる勧告を含む「慰安婦」報告書を提出し、同報告書はすでに全会一致で採択されている。

 前田助教授の報告で、今回の人権委員会での報告書は、「国家に犯された暴力」とする総合的な報告書でありながらあえて、再び日本を取り上げ法的責任を追及したもので、クマラスワミ特別報告官の基本認識、立場は96年の報告書から何ら変わることはない、ということが明らかになった。

 また、同じく人権委員会に参加した田中甲衆院議員は、真相究明、調査の必要性についてクマラスワミ特別報告官は今なお主張しており、これは不可欠なものとして追及されなければならない、との立場を明らかにした。そして、そのための取り組みとして民間ではなく政府機関としての戦時女性に対する暴力・被害実態の調査会を設置することを求めるべきだ、との考えを述べた。現在、調査会を設立することを立法化する動きは日本の国会でも論議されており、今年中の解決を目指して、動きが活発化している。

 今回、同フォーラムには南朝鮮、台湾、フィリピンの国会議員らも参加した。

 南朝鮮の李美卿議員はまず「『従軍慰安婦』問題は日本の戦争犯罪であり、日本の国家が関与したというのが真実だ。よって、戦時における人道に対する罪に値し、国際法にしたがって対処すべきものだ。真相を明らかにしないままの謝罪も補償も真実とは言えない」と強調した。

 李美卿議員はまた、「日本は、この問題を政府が関与せず国民基金というかたちで、貧しい被害者を助けるというお金の問題にすり替えた。アジア諸国が連帯して、日本の国家責任を追及していくべきだ」と述べた。

 台湾の高恵宇立法委員も「日本は法的責任をどうとるかを考え、資料の公開や侵略戦争を教科書できちんと記述することなどをやるべきだ」などと訴えた。

 先月、日本政府に立法措置を講じることを求めた首相当ての勧告書を提出した日弁連OBで、現在「慰安婦」問題の立法解決を求める会の土屋公献会長は「慰安婦問題の解決をおろそかにすることは日本にとっても損失だ。きちんとした真相究明が必要だ」と指摘した。