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東京朝鮮中高級学校新校舎建設/21世紀に向けた環境と内容充実へ


 東京朝鮮中高級学校新校舎建設事業の第1段階となる新校舎棟(本館)がこの程完成した。16日には高級部の全生徒が旧校舎から新校舎棟に移り授業を始めた。これで建設工事は約70%が終了。現在は10月の竣工式を展望して1号館の解体と食堂・多目的ホールの建設、2号館(中級部校舎)の改築などが進められている。また同校では今年度から、高2から分かれる文系、理数系、商業系の3コースのうち、文系クラスに体育科と情報処理科の2つの専門科を新設。新校舎の建設とともに、21世紀に向け教育環境と内容をより充実させようと積極的に取り組んでいる。(道)

 

第1段階の本館完工/高級部生徒が入舎

 新校舎棟は延べ建坪約1700坪、鉄筋3階建て。24の一般教室と、約30の各種特別室がある。

 造りも特徴的で、廊下は一般規定よりも幅が広く、色は淡いピンクになっている。また教室の床だけでなく廊下や階段の壁もすべて木目になっており、各階には四角いベンチがならんだ「学生ホール」が2つずつ造られた。こうした明るい色彩と広い空間、自然を意識した木目の壁は、「生徒の気持ちに落ち着きと安らぎを与えるためのものだ」(金哲煥副校長)という。

 机もイスもすべて新品。この日、新校舎棟に移った生徒らは、「明るくて気持ち良い」「この校舎で学べるなんて幸せ」などと歓声を上げながら跳ねるように校内を見回った。1年生は入学式の日に父母らと一緒に見学しているが、2、3年生はこれが新しい教室との「初対面」。

 2年生の金成宇君は「とてもきれいだし、造りもモダンで感動した。工事している時から、新しい校舎に入るのが待ち遠しかった」と喜びを隠さなかった。

 この日は新校舎で初めての授業も行われた。まだ慣れない教室に、先生も生徒も落ち着かない様子だったが、3年生の高元基君はいつもより授業に集中できたと言う。

 「卒業前に入れて良かった。新校舎を建ててくれた卒業生や父母、同胞らに本当に感謝している。いつまでも大切に利用したい。一生懸命勉強して同胞たちの気持ちに応えたい」と話していた。

 

体育科と情報処理科を新設/高級部教育で初の専門科

 民族教育における高級部教育で専門科が設置されたのは東京朝高が初めてだ。

 金哲煥副校長は「1世が親だった頃に比べて、今の2、3世の親は定住思考が強い。こうした現状は、4、5世の子供たちが日本社会で堂々と生きていくための力と知識、能力を養うことをより切実に求めている。そのためにも民族教育が民族心を育むだけでなく、生徒の個性を生かし、能力・素質・希望に合った教育を行うことが大切だ」と語る。

 体育科の目的は、朝高のスポーツクラブを強化し、日本の公式大会(インターハイ、選手権大会など)で優秀な成績を収め、民族教育の素晴らしさを内外に大きく誇示することと、有能なスポーツ人材を育成し、在日同胞社会のスポーツ分野の発展に寄与することだ。

 対象となる生徒は、日本の公式大会で都ベスト8以上の実績を持つスポーツクラブのメンバーで、希望者を受け入れる。現在の人数は高2に39人、高3に46人の計85人。当面は、全国クラスで活躍しているサッカー部、ラグビー部、ボクシング部の三つのクラブに絞られたが、実績さえ残せば女子クラブも対象になる。

 授業内容は基本的に一般の文系クラスと同じ。国語、数学、英語、日本語など一般の科目を受ける。ただし週に4、5度の選択科目の時間はすべて専門授業(共通体育・専攻体育)になる。

 「共通」では保健・体育理論と、体操、陸上、球技などの実技を習い、「専攻」では審判資格獲得を念頭に置いた競技運営に関する理論学習や、各クラブごとの技量向上のための実技、すなわち日頃のクラブ活動と同様の練習を行う。

 サッカー部の朴泰憲君(3年)は「男子だけなので、クラスでの生活が乱雑になるのではと心配したが、取り越し苦労だった。みんなが『全国』というしっかりした目標を持っているので、とてもよくまとまっている。必ず良い結果を出して先輩や同胞たちの期待に応えたい」とやる気に満ちていた。

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 情報処理科の設置は、世界的な情報化の進展に対応したもの。日本でもどんな職業に就いてもますますコンピューターの知識、手段は求められよう。高級部でコンピューターの基礎知識を身に付けることは、父母や生徒らの新しい要求となっており、卒業後の進路の幅を広げることにもつながる。

 高2に進級する際に希望生徒を受け入れる。今年は基礎を習う高2にのみ設けられ、38人が学ぶ。専門知識を段階的に学ばなければならないため、授業を専門的に受けてこなかった高3は見送られたからだ。

 授業は体育科と同じく一般の文系クラスの授業を受け、選択科目を専門授業(理論・演習)とする。教科書は「情報処理」(高2、学研)と、「情報管理」(高3、実教出版)を用いる。

 高2の一年間は「経営活動と情報処理」「コンピューターの機能構成」「情報検索」など11項目の基礎知識を学び、高3の1年間で内容を深める。とくに高3ではプログラミングと課題研究に比重が置かれる。

 2年生の金里香さんは「コンピューターに関心があったので、専門のクラスが出来てとても嬉しい。将来はやりたいことが多くてまだ決まっていないが、何をするにしてもコンピューターの知識はきっと役立つと思う」と話していた。