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時事・解説//南朝鮮 整理解雇制導入から2


「失業者200万人時代」へ

 深刻な通貨・金融危機に陥っている南朝鮮で、企業側の「経営上の都合」による人員整理を認める整理解雇制が施行されてから2ヵ月が経過した。国際通貨基金(IMF)が緊急融資の条件として提示した構造調整の一環として導入されたものだが、失業者数、失業率ともに激増しており、雇用不安は広がる一方だ。しかし同時に、失業者の労働組合結成をはじめ、現状打開に向けて新たな動きも表れ始めている。 (根)

 

増える「IMF放浪者」

 「(整理解雇制導入の)合意案が立法化されれば労働者はみな死んでしまう」。去る2月13日に焼身自殺した慶尚南道・巨済島の大宇造船所勤務の男性労働者が死の直前に撒いたビラには、こう記されていた。

 深刻な現状は統計に表れている。失業者は2月末現在で123万人と大台を突破し、年内の200万人到達が確実視されている。また、失業率も昨年12月末の3.1%から1月末で4.5%、2月末で5.9%と2ヵ月でほぼ倍増。企業の買収・合併(M&A)に伴う解雇も認める整理解雇制が「失業者200万人時代」の到来を早めた格好だ。

 整理解雇制導入の3日後に、大邱毎日新聞が整理解雇を初申告。マスコミで2000人、銀行では1万2000人が順次解雇された。経営不振の現代自動車は全職員の2割、9000人を解雇する方針を固めたが、三星電子やSKテレコムなど同じく解雇を実施した企業が「希望退職」の形を取ったのに対し、現代自動車は初めから「整理解雇制採用による解雇」を打ち出し、労組の猛反発を浴びている。

 大・高卒者の就職難も深刻だ。ソウルや釜山など主要13大学の調査では、就職率が3〜6割という数字が出た。「解雇で手一杯で、新規採用まで手が回らない」(現代グループ関係者)現状だ。

 「IMF」は一種の流行語となり、突然の解雇を家族に告げることができずに、普段通りに出勤を装って自宅を出た後、駅の待合室で寝ていたり、路頭をさまよう人たちは「IMF放浪者」と呼ばれるようになった。行き場を失ったこうした人を狙って早朝割引を行う映画館やサウナがにぎわい、中には「出張中」と偽って家出したり、背広姿で家を出て、山の麓で着替えて登山する人も多いという。

 こうした雇用不安は社会に対する心理的な不安につながり、自殺者の急増や凶悪犯罪の低年齢化、悪質な「就業詐欺」など様々な問題を生んでいる。

 

金融危機が引き金に

 一昨年の経済協力開発機構(OECD)加盟で「先進国の仲間入り」を果たしたのも束の間、韓宝、真露、起亜、漢拏と続いた連鎖倒産で、南朝鮮は国際的信用を一気に落とした。株価は暴落し、ウォンの対米ドルレートは一時、2000ウォンの最安値を付けた。外貨不足も追い討ちを掛け、12月3日にはIMFの融資実行で合意。これが雇用不安の引き金を引いた。

 この過程で、経済失政、「大統領」としての無能さを露呈した金泳三に代わり、今年2月25日に発足した金大中新「政権」は、金融危機脱出における「苦痛の分担」を労働者に訴えた。その最重要課題に掲げたのが、金大中本人が野党時代には反対していた、整理解雇制の導入だ。

 労使双方と政府・政党の代表15人は1月に金融危機問題の協議機関、労使政委員会を結成。2月6日に整理解雇制導入などを盛り込んだ合意案を発表し、同24日から施行された。しかし、労使の「苦痛の分担」を掲げつつも、実際には労働者のみが犠牲を強いられる内容となっている。

 

2大労組が闘争決起/失業者労組など新たな動き

 大量解雇・失業の現実に直面し、全国民主労働組合総連盟(民主労総)と「韓国労働組合総連盟」(「韓国労総」)という2大労組が本格的に動き始めた。

 民主労総は3月19日の記者会見で、不当解雇阻止の連帯闘争を繰り広げると言明。「韓国労総」も同日、抗議集会やストを全国規模で展開するなどの闘争指針を傘下4500労組に通達した。

 3月20日には民主労総傘下の全国建設労働組合連盟が初の失業者労組「全国建設労働失業者連盟」を結成し、「韓国労総」も今年上半期中に「全国失職者連盟」(仮称)を発足させ、失業者の受け皿として生活支援や就職斡旋を行っていくと決定した。

 当局は「失業者は労働者ではなく、労組結成は認められない」としているが、26日には国際労働機関(ILO)理事会で、失業者労組認可を促す勧告案が採択されるなど、国際世論も追い風となっている。

 一方、南朝鮮監査院は今月10日、金泳三「政権」の金融政策担当者だった姜慶植・元副総理兼財政経済院長官と金仁浩・元青瓦台経済首席秘書官を「事態の深刻さに気付かず、適切な措置を怠った」として、刑法上の職務遺棄容疑で検察に告発。現「政権」に対する要求闘争とともに、前「政権」の失政追及の動きも活発化している。

 労働者が求めているのは、整理解雇制の導入撤回と、「不当労働行為」の中止だ。企業側は、労使政合意で「苦痛の分担」がうたわれたにもかかわらず、整理解雇制導入に便乗し、解雇回避の努力を怠ったまま一方的に解雇を断行したり、辞表提出を強要して退職金をカットするなどの不当行為を行なっている。

 こうした現状を打開するために労働者は立ち上がっており、その団結は前にも増して固まっている。