視点
映画「タイタニック」が今年度アカデミー賞を総なめにした。英国の豪華客船が、1912年4月に氷山にぶつかり沈没した悲劇を描いた。映画の中で、3等船客のアイルランド人とおぼしき男性が、「これはアイルランドの船だ」と語るシーンがある。船の建造に数千人のアイルランド人が駆り出されたためだ。当時、アイルランドは英国の植民地。そのうえ、経営者がコストを切り詰めたため、労働者は低賃金と過酷な条件下で働かされた。
その「怨念の歴史」にやっと終止符が打たれようとしている。10日、北アイルランド紛争の和平交渉が合意に達した。
1921年、「英・アイ条約」が結ばれ、800年に及ぶ植民地支配が終わった後も、北アイルランドだけは取り残された。英国移民の子孫であるプロテスタント系住民が「英国残留」を求めたためだ。60年代に入り「南北アイルランド統合」を求めるカトリック系の公民権運動が激化、民族と宗教問題がからんだ流血の紛争が30余年も続いてきた。
今回の和平合意の意義は大きい。国連が介入したカンボジア、欧米が軍事力で封じ込めたボスニアとは異なり、「北アイルランド方式」が21世紀に向けた和平構築のモデルケースとなる(朝日新聞11日付)との指摘もある。
今、朝鮮半島においても新たな動きが出ている。これを確かなものにするためにも、対決ではなく和解と団結の精神で対話と信頼の雰囲気を構築する必要がある。(聖)