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生野初級付属幼稚班園舎新築/「立派な設備に驚き」


 生野朝鮮初級学校付属幼稚班(3年保育)の園舎が新築された。5日、同幼稚班には37人の児童が入園した。在園生と合わせて計81人の児童が新しい園舎で学ぶ。この間、同胞らは総工費1億2500万円を集めるなど、多大な情熱を注いできた。同幼稚班アボジ会の文茂雄会長は「子供を立派な朝鮮人に育てるためにも、民族教育の最初のステップである幼稚班教育は絶対に必要だ。これからも1世の代を継いで民族教育をしっかり守っていきたい」と話していた。(道)

 

ガラス張り、塀なしの開放的な空間/自然をイメージしたカラフルな配色

 生野初級は1991年に東大阪第1、第2、第3の各初級学校を統合して設立。その翌年8月には、父母らの募金活動により新校舎が建設された。同時期に予定されていた生野朝鮮幼稚班の新築は、経済難など諸般の事情により実行できず見送られたが、建設のための活動はその後も地道に続けられた。

 式典では総聯中央の呉秀珍副議長兼大阪府本部委員長のあいさつに続いて、建設委の蔡成泰事務局長が経過報告を行った。蔡事務局長は、深刻な不景気の中で無事に園舎を建設できたのは、未来にはばたく子供たちのために総聯の生命線である民族教育を守って行こうという、同胞らの強い決心があったからこそだと指摘。今日の竣工が民族教育のさらなる発展の分岐点になるよう、今後も力を合わせて行こうと呼びかけた。

 また来賓の朝倉秀実府会議員、大阪市立小路保育園の山口幸代園長があいさつし、園舎建設に寄与した人々に総聯中央と建設委がそれぞれ感謝状を送った。

 

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 新築した園舎は建築面積160坪、鉄筋2階建て。

 設計を担当したのは初級部学父母の金昌秀さん(秀翠建築設計事務所所長)だ。「子供たちがのびのびと学び、遊べる空間」をテーマにした。

 特徴的なのは、各教室の運動場側のドアがすべてガラス張りでドアを開ければすぐに運動場に出られるなど、開放的に設計された点だ。色合いは土、木、空をイメージし、床は茶色、階段はグリーン、天井はブルーになっている。「自然との触れ合いを大切にし、空に向かって大きく伸びる木のようにすくすくと育ってほしい」(金昌秀氏)との願いが込められている。

 敷地の周りは、塀ではなく鉄製の柵で囲っており、中から外が、外から中が見えるようにした。子供たちの姿を通して、朝鮮幼稚園の教育内容や朝鮮民族の生活風習を周囲の日本市民に見てもらうことで、地域とのコミュニケーションを図ることが狙いだ。

 この日、双子の娘を入園させた高敏愛さん(28)は、「立派な設備が整っている。とても立派で驚いた。これなら安心して子供を送れる」と話していた。

 

朝鮮幼稚班

世代交代で重要性増す/民族情緒に触れる環境を

 現在、民族教育における幼稚班教育は各地62ヵ所(単独2、あとは各級学校付属)で行われている。各朝鮮幼稚班では3歳からの3年保育が実施されており、内容は「社会」「ウリマル」「健康」「自然」「音楽律動」「造型」といった6つの領域で編成される。児童の発育過程と能力に応じた「生活体験」と「遊び」が基本的な教育方法だ。

 生野幼稚班の権敏子主任(49)は「朝鮮幼稚班の教育は、幼児に『朝鮮人』としての意識を与えるための土台作りと言える。幼児は見て聞いて触るなど五感を通した体験をもって、すべてのものを感覚的に受け入れる。幼児期に朝鮮名で呼び合ったり、朝鮮の音楽を聞くなど、自然に民族の情緒に触れる環境を作ることが大切だ」と語る。

 とくに世代交替が進み、親のほとんどが3、4世の中で、朝鮮幼稚班の重要性は増している。実際、生野幼稚班に子供を通わせている親の大半が20〜30代前半の3世だという。

 民族意識が薄れていると言われる3世。その多くの家庭で日常会話は朝鮮語でなく日本語でなされる。そうした環境で幼児が民族を体験する機会が少ないのが現状だ。

 「何よりも幼児が自然に民族に触れられる空間を作ることが大事。朝鮮幼稚班はその絶好の場だ」と権主任は強調していた。