特集/各地の日校学生会公演
兵庫、京都、愛知(3月29日)、東京(27日)でそれぞれ行われた各地学生会の文化公演(各都府県の学生会主催)では、演劇や民族舞踊、民族音楽など多彩な演目が上演された。より地域に密着した支部づくりなど、活動強化の一連の運動の一貫として企画された公演では、出演者全員が胸の中に息づく民族意識を体全体で表現した。
兵庫
コンサート「希望にみちて」/チョソンサラムの素晴らしさ
兵庫朝鮮学生会の第12回コンサート「希望にみちて」(神戸市灘区民ホール)は、父母や日本学校の友人、学生会OB、朝青員ら約300人が観覧した。
同学生会はこの一年間、支部学生会の結成・再建を目的にした「友情運動」を展開してきたが、コンサートはその締め括りとして開かれた。
運動では、同胞学生が気軽に集まれる場を作ろうと、クイズスタンプラリーや高松塚古墳の探訪など県全体でのイベントとともに、ブドウ狩り、チジム作りなど地域ごとの催しを積極的に行って来た。その甲斐あって、昨年8月から10月までの間に、休止状態だった10地域の支部学生会が活動を再開した。
メインイベントのコンサートには、25人のメンバーが出演。朝鮮の歌や踊り、OBから贈られた楽器で演奏したサムルノリなどが披露された。通名で学校に通う会員が、友人らの前で自分の本名を明かすいわゆる「本名宣言」を題材にした演劇や、友情出演した神戸朝鮮高級学校声楽部の女性重唱も好評だった。
徐炳哲会長(18)は「今日の公演は学生たちにとって、祖国と民族に触れ、チョソンサラムとして立派に生きて行くことの素晴らしさを感じるきっかけになったと思う」と話していた。
京都
「みんなのためのコンサート」/悩み、葛藤、希望
第20回京都学生会「みんなのためのコンサート」(京都市西文化会館ウエスティー)には、日本学校の教員と生徒、父母ら約200人が集まった。コンサートは1979年以来、年間の活動を締め括る催しとして毎年行われている。
府下では昨年、2つ目の支部として南山城に学生会が結成されたほか、全体の会員数も着実に増え、現在までに約40人ほどになったという。
今回のコンサートは、学生会メンバーに受験生が多く、多数が出演を見送ったため、出演者は全部で11人とここ数年では最も少なくなった。しかしその分、時には泊まり込むなど、皆が2ヵ月間、みっちり練習を積んで来た。
1部の劇では、日本学校に通う同胞学生が、朝鮮人としての自分を見つめ直し、「本名宣言」するまでの心の葛藤を描いた。合唱や3人舞、農楽などが披露された2部では、各々が民族に触れる喜びを体一杯に表現。演目が一つ終わる度に大きな拍手が起こった。
初めて見に来たという竹下恵理子さん(44・看護婦)は、「今の日本にともに生きる在日朝鮮人の青年たちのありのままの姿、それも表面的なものだけでなく、内面の悩みや葛藤、希望がよく伝わってきた。もっとたくさんの人が見れるよう、広く知らせて欲しい」と話していた。
愛知
「祖国まで届け私たちの詩」/人生観変える力 今も
愛知学生会が行った結成30周年記念コンサート「祖国まで届け私達の詩 Part12」(県中小企業センター)には、370人が観覧に訪れた。
公演では、今も残る朝鮮人差別を乗り越えるには、朝・日の人々が協力すべきだというメッセージを込めた劇や、30年間の活動を見せるスライド上映、舞踊やバンド演奏、歌などが披露された。
愛知では、2年前の公演をきっかけに、瀬戸と豊田の2つの支部学生会が発足し、地域に密着した活動を行ってきた。今回は2人の学生が、公演への出演を機に学生会に加わった。
またこの間、朝青県本部が行政への支援要請を重ねて来た結果、県、名古屋市、県と名古屋市の教育委員会などが後援についた。同本部が中心になって行ってきた日本学校との交流の成果も出て、学生会メンバー以外の同胞学生も参加している東海高校の「プンムルノリ講座」との合同演目の上演も実現した。
終演後には、初めてOBの集いも行われた。OBらは公演を様々な形でサポートしたが、初代会長の李哲鎬さん(44)は「学生会は日校生の人生観を変えるだけの力を持っている。結成30周年を機に、学生会の発展をバックアップしていきたい」と話していた。
東京
「君が『君』であるために」/堂々と生きていこう
6年振りの開催となった東京学生会公演には、260人が集まった。同学生会では、昨年11月の総会で公演開催を決定、1月から準備を進めた。
今回の第7回公演「君が 『君』 であるために」(豊島区立南大塚ホール)は同タイトルの演劇を軸に、朝鮮の歌や踊り、サムルノリを織り混ぜた内容になっていた。
演劇では、日本の学校に通いながら自分が朝鮮人であることを隠している学生会メンバーの葛藤と、それを乗り越える過程が描かれていた。
東京朝鮮会館に通い詰め、夜遅くまでサムルノリの練習に励んだという北学生会の李陽仙さん(17)は「練習に打ち込む間に、普段にも増してトンムたちと色々な意見を交わした。学生会が日本学校では話せない悩みを出し合い、朝鮮人としてのプライドを強くする場であることが、より深く分かった」と話す。
また東京学生会会長の゙孟賛さん(17)は、劇を通じて、自分の考えをうまく伝える事ができたと感じているという。「中2の時にサマースクールに参加して以来、日本の友達にも自分が朝鮮人であることを打ち明けられるようになった。1人でも多くのトンムが朝鮮人として堂々と生きて行ける心を持てるように、今後も会員を増やして行きたい」と話していた。
学生会/朝鮮語取得など民族性育成目指す
民族意識を育もうと、日本の中学・高校に在学する同胞学生(日校生)が在日本朝鮮青年同盟(朝青)のバックアップを受けながら運営している組織。1960年代ごろから活動しており、各都道府県ごとに本部、地域ごとに支部がある。
活動内容は地域によって異なるが、朝鮮語の習得をはじめ、民族楽器、朝鮮料理など民族文化に関する講座や、強制連行跡地のフィールドワークなどがメイン。学生会どうしの交流も盛んだ。
メンバーの数は、少子化傾向やその時々の情勢の影響を受けながら増減を繰り返してきたが、この3年ほどは増加傾向にあり、20以上の支部が新たに作られた。