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イギョラカップ杯、ピョンファ杯に見る各朝高サッカーチーム


 94年からインターハイ、96年からは全国選手権参加が認められるなど、朝高サッカー部の活躍の場は広がっている。昨年は、東京朝高が全国選手権の東京A予選の決勝まで進み、今年2月には京都朝高が府の新人戦で初優勝するなど、「今や日本の高校と完全に同じ土俵に立った」(李清敬・前東京朝高監督)。元来は、チャンスの少ない朝高に日本の強豪校と試合の場を、と毎年3月末に開かれてきたイギョラカップ(東京)とピョンファ杯(広島)だが、環境の変化にともない、朝・日の各校が3年生引退後、始動したばかりの新チームの仕上がりを確認するための絶好の機会として定着している。両大会に出場した朝高チームをみた。

 

「全国」も狙える/大阪、広島

 4月中旬から始まるインターハイ予選を前に、ピョンファ杯で順調な仕上がりを見せたのは、大阪と広島の両朝高だった。現在、各都道府県レベルから見て、「全国」に一番近い距離にいる朝高が大阪と広島だと言っても過言ではない。

 大阪はメンバー11人のうち9人が1年生(新2年生)ながら、強豪を次々と打ち破り、決勝では全国選手権広島代表の沼田高に、技術とスピードで堂々と競り勝った。

 在日朝鮮蹴球団の梁相弘副団長も「技術だけをみれば、むしろ日本の高校より勝っている。とにかく若いため、あとは経験だけ」と太鼓判を押す。

 「照準はあくまでもインターハイと全国選手権。今回、優勝できたことは予選に励むうえで自信になる」(金哲生主将)と、選手たちも確かな手応えを感じたようだ。

 一方、広島朝高は主力メンバー3人を欠きながらも、全国選手権代表の大社高を破り、3位決定戦では県新人戦優勝校の皆実高を相手にPK戦にまで持ち込む健闘を見せた。

 左右のウイングの突破力を生かしたスピーディーな攻撃は、全国クラスにも十分通用した。準決勝の大阪朝高戦でも2点を先制されながら、両ウイングを生かした攻めで同点に追い上げる底力を見せた。

 皆実高の加藤俊夫監督は「広島朝高とはよく練習試合をしているが、回を重ねる毎に手強くなっている。全国を狙ううえで怖い存在だ」と語る。広島朝高の張卓士主将は「県1位の学校と言っても力の差はない。十分勝てると確信した」と力強く話す。

 しかし、「広島はチーム力が強みだが、パスミスなどの基本的な細かいミスが目立つ」(李康弘・蹴球団部長)。実際、些細なミスを機に攻め込まれる場面が多かった。キーパーの好セーブで失点にはつながらなかったが、一つの課題と言えるだろう。

 

守りなど多い課題/東京

 昨年のチームが選手権の東京A決勝まで進んだとあって、東京朝高に対する同胞の期待は高い。今回のイギョラカップは、1、2年生の新チームとなって1ヵ月、初の力試しの場だ。

 予選リーグA組の東京朝高は初戦で今年の選手権出場校、仙台育英を2―0で下したが2試合目の西武台千葉とは0―0で引き分けて、辛うじて1位で予選リーグを突破した。翌日、習志野との準決勝では前半無得点のまま迎えた後半3分、12分に連続失点した後の17分、いい形で習志野陣内に切り込み1点返して追撃に転じたが、習志野のディフェンスに阻まれ2―1で惜敗した。

 最終日の3位決定戦の相手は帝京。会場も「芝生」の西が丘サッカー場とあって、昨秋の全国選手権東京A予選の「再現」となったが、4得点した帝京が圧勝。東京朝高は1点も返せず4位に甘んじた。

 東京朝高新チームの特徴は「個人的に技術の秀でた選手がいない。チームプレーで局面を打開していく必要があり、集中力を持続させることが大切」(黄雲海監督)。まずディフェンスを固めることを課題にして今大会に臨んだが、とくに3位決定戦の帝京戦では「帝京という名前に負けて」(柳正浩コーチ)集中力が切れ、精神力の弱さを露呈。大量得点を許した。

 就任2年目、イギョラカップ初の采配となった黄監督は「インターハイに向けたチーム力強化の場にしようと臨み、失点を極力減らすことを目標にしたのだが、課題は山積だ。初心に返ってチーム力作りに取り組むつもりだ。とくにディフェンスラインをしっかりと固めて攻撃につなげられるようにしたい。強豪が揃うイギョラカップは、チームの実情を把握し、今後の課題を確認するための重要な場だ」と話していた。

 また鄭大侮蜿ォは「あらゆる面で他校のレベルの高さがよく分かり、自分たちが今後、何をすべきなのかを理解するいい機会になった。今後は一人一人が自らの役割を自覚し、チームプレーができるように頑張りたい」と語った。

 

広島朝高のコーチに/ルイス・ガルバン氏(W杯優勝の元アルゼンチン代表)

 74年のW杯で優勝したアルゼンチンチームの代表メンバー、ルイス・ガルバン氏(46)が、ピョンファ杯開催中の3日間、広島朝高サッカー部のコーチを務めた。

 同氏は今回、埼玉で開かれた中学生の大会に参加したアルゼンチンの学生らとともに訪日した。時期がピョンファ杯と重なったため、広島朝高と交流のある日本のサッカー関係者が是非にと紹介した。代表当時のポジションはストッパー。W杯ではフェアプレー賞も獲得した名選手だ。現在はアルゼンチンでサッカースクールを開いている。

 広島朝高について「スピードはあるが、ボールをもっと大切にすべき。急ぐ余りパスミスを連発する。スピードを生かそうと縦のロングパスを多用するが、もっと中盤で大事にパスをつなぎ、相手ディフェンスを崩してからでないと意味がない。そのためにはボールを持っていない時にいかに動いてフリーになるかが大切。ディフェンスも、ボールがない時にいかに相手をマークするかが大切だ。こうした点を克服すれば、もっと強くなる」と話していた。