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日本政府は立法措置を/「慰安婦」問題で日弁連が勧告


 日本弁護士連合会(鬼追明夫会長)は6日、元「従軍慰安婦」への加害行為は、日本の国家・軍の関与のもとに行われたもので、人格的価値を否定し、人間の尊厳を犯した行為であるとしながら、日本政府に対し、早急に立法措置を講じるべきだ、とする橋本首相への勧告書を提出した。

 勧告書では、元「従軍慰安婦」に対する「女性のためのアジア平和国民基金」(国民基金)が「償い金」を交付する事業を実施しているが、これは法的賠償ではないと指摘しながら日本政府に対し、法的責任を明確にした上、被害者に謝罪を表明し、適正・可能な被害回復のための補償措置を含む立法解決を早急に検討すべきだ、としている。

 同勧告は、日弁連がフィリピンのリラ・ピリピーナ、南朝鮮の「韓国挺身隊問題対策協議会」など5つの市民団体から、人権救済の申し立てを受け調査した報告書に基づくものだ。

  解説 日弁連は昨年7月、台湾の「従軍慰安婦」の支援団体から人権救済の申し立てを受け、台湾の元「従軍慰安婦」に対する真相究明、謝罪、賠償などの被害回復のための立法解決を日本政府に勧告していた。昨年の勧告以後、日本政府にまったく改善が見られないため、今回、再度の勧告となったものだ。

 これまで日弁連は、1995年1月に「従軍慰安婦」問題に対する提言をまとめており、その中で日本政府の法的責任についてはっきりと指摘し、元「従軍慰安婦」を戦争犯罪の被害者と認定し国際法上も個人補償などを要求する権利があることを明確にしている。

 95年の日弁連の提言は、日本の法曹界が日本政府の国家責任を法的根拠をあげ追及した初の見解として注目され、また提言の中身は日本の戦争責任が国連を舞台に国際的にも追及されている流れに沿ったものとなっている。

 日弁連の提言を前後し93年、国連人権小委員会のファンボーベン特別報告者が被害者の被害回復を求める権利についての最終報告書を提出、以後、94年2月に国連NGOのIFOR(国際融和会)、11月にはICJ(国際法律家委員会)、95年1月に大韓弁護士協会がそれぞれ日本政府に法的な個人補償をすべきだとの見解を相次いで公表している。

 さらに、96年には国連人権委員会のラディカ・クマラスワミ特別報告者による戦時の軍事的性的奴隷制問題に対する調査報告書が公表され、国連における日本政府への追及が一層激しくなった。

 今回の日弁連の調査結果では、日本政府がこうした内外の声をまったく無視している状況に触れ、いまだに法的な責任がない、個人に対する補償を行う必要がないとして、民間による「国民基金」を通じて責任の回避を積極的に行っているとの申し立てに注目しながら「国民基金」は明確に真相究明、国家賠償を免れるためのものと指摘している。

 また、最近も南朝鮮の日刊紙に「国民基金」の全面広告を出し、橋本首相のお詫びの手紙をのせるなど、あたかも政府が基金を実施しているかのごとく虚偽の宣伝をしていることなどにも触れ、「国民基金」の推進は新たな人権侵害を起こすとの被害者、支援団体の声を全面的に後押ししている。

 今後、被害者とその支援団体も、日弁連の勧告をもって日本政府への被害回復のための補償措置としての立法による解決を求める動きが活発となることは必至だ。(嶺)