朝鮮学校差別の是正を/日弁連調査報告書(要旨)C
人権侵害/民族、国家の主権も侵害
朝鮮学校およびインターナショナルスクールは、自国ないし日本にとって諸外国の言葉と文化を教育内容とするために、それぞれ日本国の学校教育法または各自国ないし国際的に承認されている基準に相当する教育を実施しているにもかかわらず、現行のようにそれぞれ相当する学校の卒業ないし修了資格を認められていない。そのため、その卒業生および修了者ならびに各学校は、資格と就職の機会において著しい不利益をもたらされている。
大学進学について、現状では多数の私立大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格を認め、公立大学も約半数がこれを認めている。しかし国立大学ではまったく受験資格を認めておらず、朝鮮大学校卒業者の国立大学の大学院入学についてもまったく認められていない。
朝鮮各級学校が各種学校として受けている補助金は、およそ学校教育法第一条に準拠する学校の10%程度である。これは、児童の通学に対するものなど一部の都道府県と市区町村の行う補助に過ぎないため、学校の経常経費に対する助成はまったく受けていない。
在日外国人は、日本国民と同様な教育を受けて自己の民族ないし自国の文化言語の保持のための教育を犠牲にするか、または自己の民族ないし自国の文化言語を保持する教育を受けることにより、日本国においては公的に認められる資格をほとんど取れず、教育経費において公立学校のみならず私立学校とその児童生徒が受けている教育の助成処置を受けられない不利益を受けるかの二者択一を余儀なくされている。
在日外国人は、自己の文化を保持する教育を受けることを犠牲にして日本国の教育を受けないと、義務教育すら修了していないことになり、各種職業に関する公的資格の受験がほとんどできず、職業選択および収入において終生甚だしい不利益を受けることを余儀なくされている。これは結局、自己の文化を保持する者は無資格無学歴で就ける職業に限定されることになり、とくに歴史的に自己の意思による選択によらずに日本国に在住する外国人にとっては、単に不利益に止まらず精神的苦痛を受け、人間の尊厳に対する侵害を受けているものと認められる。
上記の甚だしい不利益は、外国人が自己の民族ないし自国の文化を保持(維持・継承・発展を含む)することを間接的に妨害するものであり、憲法、国連憲章、各宣言、各条約によって日本国が保障しなければならない外国人の自己の文化を保持する権利に対する重大な侵害であり、在日外国人が自己の文化を保持する権利は、日本国民が各自己の文化を保持する権利とともに神聖不可侵の権利であるから、不利益を甘受させ、不平等を生ずる差別を合理化する理由は存在しない。
また各民族および各国に、その所属する構成員ないし国民を教育する権利と義務があることは国際的に確認されている。現行の学校教育法の第一条の運用による日本国の教育を受けざるを得ない状況に外国人を置き、あるいは自己の文化を保持する教育のために過大の負担を負わせることは、各外国人に対する権利の侵害のみならず、その民族に対する侵害であり、各外国人の本国の主権に対する侵害であると解される。