朝鮮学校差別の是正を/日弁連調査報告書(要旨)A
政府の対応/民族文化継承への配慮なし
日本政府は、朝鮮各級学校や、その他インターナショナルスクールに対してもその教育内容が学校教育法に合致していないので、同法第1条に規定する学校に該当しないものとし、その児童生徒学生に対しても、小・中・高・大学それぞれの在学生及び卒業生としての資格を認めていない。
文部行政としては65年12月28日付の文部次官通達と、これに伴う文書によって戦後、公立小学校などに設置されたいわゆる朝鮮人分校ないし朝鮮学級が廃止され、その後は同通達・文書が基本となって進められてきた。
上記通達は、各都道府県知事あてに、日本に居住する大韓民国国民が学齢に達して公立小中学校に入学することを希望する場合にはその入学を認められるよう、また中学校を卒業してその上級学校に入学を希望する場合にはその入学が認められるよう必要な処置をとること及びその、授業料、教科書の無償など日本国民と同等に取り扱うべきことが中心となっている。
日本国政府は、外国人の教育に関して基本的には、日本国民と同様に日本国の公立学校に就学及び進学させれば足りるものと判断してきたものと認定される。
さらに文部次官は、前記通達とともに同日付で各都道府県の知事および教育委員会あてに通達を出し、「朝鮮人を含めて一般にわが国に在住する外国人をもっぱら収容する教育施設の取り扱いについては、国際親善などの見地から、新しい制度を検討し、外国人学校の統一的扱いをはかりたいと考えている」との重要な考えを示した。
その後、日本政府は67年から72年にかけて「外国人学校法」案を上程したが、同法案は外国人の学校教育を保障・助成するものではなく、外国人学校をすべて文部省の管理下におくものであり、ついに成立を阻止されている。
上記通達から32年が経過しているが、外国人学校の統一扱いに関する「新しい制度」は何ら実施されておらず、これを策定するための検討をする機構・機関も設置されていない。
このために、日本国に滞在居住する外国人の子どもが学齢期に達した場合、公立学校においては、その子どもたちが自国語ないし自国の文化を継承する教育を受け、また保護者がその教育を受けさせようとすることについて、課外活動としてならば差し支ないとする程度の処置しかとっていない。
学校教育法第1条の学校として認可を受けている私立学校で韓国語を教えている例では、文部省の定める標準に基づくカリキュラム編成となり、「国語」はあくまでも日本語のことである。「韓国語」として別に教える時間数は、中学校の場合に年間で、国語(日本語)210時間、英語175時間に対して105時間である。
現在の日本の学校教育による生徒の能力として、中学高校教育で、英語の授業をほぼ正常に受けている場合でも、英語で意思の疎通をはかり、英語圏の諸国の文化を理解するまでは期待できないのが現状である。これを比較考量すると、上記の課外活動程度では各国ないし各民族の精神的活動の成果としての一端を垣間見る程度の期待しかもてないから、日本に滞在する外国人の自国ないしその民族的文化の継承に必要な教育上の配慮はなされていないと言わざるを得ない。
朝鮮各級学校・インターナショナルスクールなどは国や都道府県の財政補助を受けておらず、児童・生徒・学生の保護者が納税の義務において何らかの特典を考慮されることもない。