朝鮮学校差別の是正を/日弁連調査報告書(要旨)@
日本弁護士連合会は、教職同中央と教育会中央が1993年2月に行った、朝鮮学校の資格および助成等人権救済申立を受けて、朝鮮学校など外国人学校の教育内容や差別の実態を、関係者の事情聴取や実地検証、資料分析などによって調査。その結果に基づき、日本政府に差別是正の勧告を、衆参両院や各政党・会派、各国立大学学長などに同様の趣旨の要望を行った。勧告・要望とともに提出され、国連人権センターを通して子供の権利委員会にも送付された調査報告書の要旨を連載する。
教育内容/1条校並、民族の誇り養う
各級朝鮮学校の教育内容は、所在地としての日本国の学校教育法の定める学校に準じた構成となっており、これに併せて朝鮮人としての民族文化の継承に必要な教養をかん養する教育をしているものと解せられる。
なお、朝鮮各級学校には、朝鮮民主主義人民共和国籍の児童生徒のみならず、母国語ないし母国の伝統的文化の教育を望む大韓民国籍の児童生徒も在学している。その内容と程度は、基本的には日本国の学校教育法第1条の各学校と同様である。
ただしカリキュラムの配分においては、初級低学年において朝鮮語教育に比較的多くの時間を配すると同時に情操教育を重視している模様で、これに相応して自然科学については初級学校高学年から中級学校にかけて日本国内の国公私立の各相当する小中高校より若干強化されており、とくに中級学校では顕著である。
社会科学においては、日本語教育については朝鮮語を国語として授業する関係で時数的に短縮する必要から古文、漢文が短縮簡易にされているが、現代文については日本社会においての職業や相互理解のための意思の疎通に支障をきたさないことを考慮して意識的に厳しく充実した授業が実施されている。
歴史教育に関しては、朝鮮史・世界史の分別により、本国の歴史を東洋情勢の歴史的変化との関連で理解を進めようとしている努力が見られる。
当委員会が国会両議院の文教委員である国会議員に対して実施した本件に関するアンケートにおいて、その回答のなかに「朝鮮学校は、反日教育をしている」として日本国の対応の改善の必要はない、とするものがあったが、反日教育と言える事実はない。
日本国民にかかる誤解があることも危惧されるので付言すると、基本的に朝鮮各級学校の歴史教育は亡国の受難を受けた国民としてその事実を教えているものと認められる。とくに反日的とは見られず、極めて当然な教育である。歴史的事実をどのように評価するかということは、それぞれの国家と国民ないし民族の尊厳にかかわることであって、相互に不可侵でなければならず、反日教育として非難するにあたるものは存在しない。
情操教育は、民族文化の理解と継承を通じて、人間性の豊かさを、自ら好み尊重する人格を形成してゆくと同時に、民族の自覚と誇りの下地を養う方針と見受けられる。
このために、とくに初級学校では、民族音楽ないし舞踊等民族文化に全児童が親しむ文化的授業に時数を多く割り当てている。
また、徳目的な教育の一環として、日本国民との親善友好と徳義を尊重し日本国の法律を遵守して日本社会に共生する精神が常に留意され、たとえば東京朝鮮中高級学校では、通学の最寄り駅から同校までの道路を当番制で清掃するなどの教育が行われている。
教育施設については、各種学校としての施設を超えて日本の小中高校に準じたものが設置されている。