ここが知りたいQ&A/日弁連が朝鮮学校への差別是正で勧告を出したが
重大な人権侵害と判断/政府に国公立並補助など解消措置提起
Q 日本弁護士連合会(日弁連)が日本政府に朝鮮学校など外国人学校への差別を是正するよう勧告したが。
A 勧告の趣旨は、@朝鮮学校などの卒業者に対し、公的な資格を認定する試験の受験において1条校と同等の資格を認めること A私立学校振興助成法によるのと同等以上の助成金交付 B民族教育の権利を侵害している各都道府県知事あての文部事務次官通達(1965年12月18日付)を撤回してその被害を回復すること、の3点だ。
日弁連は政府への勧告のほかにも、朝鮮学校卒業生の受験資格を認めていない各国立大学学長や、国立大学協会会長などにも同様の要望を行った。また国連人権センターを通じて、子供の権利条約の実施状況を審査する子供の権利委員会にも人権侵害の現状を報告している。
Q 勧告が出された経緯は。
A 日弁連は、教職同中央と教育会中央が93年2月に行った、朝鮮学校の資格・助成問題に関する人権救済申立を受け、関係者の事情聴取や実地検証、資料の分析などの方法により、朝鮮学校やインターナショナルスクールの教育内容や差別の実態を調査した。
そのうえで、資格や助成面において日本学校と外国人学校との間に著しい差異を設けることは、外国人が自己の民族文化を保持することを妨げ間接的に日本国の教育を押し付けることで、重大な人権侵害に当たり、「子どもの権利条約など関係条約違反の状態が継続している」と判断している。
また、「現行憲法制定下で発生している最も重大な人権侵害のひとつ」とするなど、現状を批判する調子にも極めて厳しいものがある。
Q 朝鮮学校側の従来の主張が確認されたということか。
A そうだ。朝鮮学校の教育内容やレベルについては、「基本的には日本国の学校教育法第1条校の各学校と同様である」としている。
その一方で、勧告とともに提出された調査報告書では、朝鮮学校側の主張より幅広い内容の差別解消措置が提起されている。
例えば、外国人学校の卒業者の資格は、特別法の制定か学校教育法などの改正で保障されるようにすべきだとし、法の制定に関しても「各民族及び各出身国を尊重した慎重な配慮を要する」と強調している。
助成面では、在日同胞が専ら私学並助成を求めてきたのに対し、義務教育段階の学校に対する経常経費、各級学校の施設費、教員養成経費に関しては、「少なくとも国公立並」の補助をすべきだとしている。
いずれも、憲法や各条約が日本政府に課した義務として指摘されている。
Q 勧告が出されたことの意義は。
A 日弁連は92年にも、高体連が朝鮮学校の大会参加・加盟を認めていなかった問題で、高体連に現状是正の要望を、文部省には勧告を行ったことがある。高体連は翌年、朝鮮学校のインターハイ参加を認めたが、日弁連の要望・勧告が世論に与えた影響は大きかった。
勧告には法的拘束力こそないが、法曹界の一角が差別の存在を正面から指摘し、政府に是正要求を突き付けたことは、朝鮮学校の権利獲得運動にとって強い後押しになるだろう。