金正日総書記誕生56周年/現地指導に見る経済建設の展望(下)
自力更生で経済を活性化/「新年の辞」に代わる元旦の訪問
軍部隊訪問の意図
共和国は昨年7月8日に金日成主席の逝去3周年中央追悼大会で喪明けを宣言し、10月8日には金正日書記が朝鮮労働党総書記に推戴された。このため朝鮮人民は今年の元旦には、「総書記が新年の辞を行う」(労働新聞1月9日付)ものと思っていた。だが、「新年の辞」はなく、朝鮮労働党、朝鮮人民軍両紙の共同社説が発表された。
総書記は新年を迎えた午前0時に錦繍山記念宮殿を訪れ主席に敬意を表した後、その足で朝鮮人民軍第337軍部隊を訪問した。金国泰、金己男、金容淳の各書記が同行した。
総書記は、軍関連の視察を通じて人民軍兵士が発揮した自力更生の精神で経済建設を推進することを全人民に呼びかけてきたが、同部隊訪問も同様の意図が込められていた。
同部隊は、自力で中小型水力発電所、浴場、サウナ、プール、文化会館、温室などを新たに建設し、自力更生の模範を示した部隊である。
337軍部隊への現地指導について、共和国の人々は「新年の辞を行ったことと同じだと心の底から受け止め」ており、それは、「今年、わが党と人民が何を肝に銘じなければならないかということを、全党と全軍、全人民に教えることになる」(労働新聞1月9日付)。
中小型水力発電所には、各地の条件に合わせて落差を利用したダム(堤防)式、水路式、ダム―水路式などがある。火力発電所に比べて労力と資材、資金が少なくてすみ、短期間で建設できる。さらに、一度建設すれば、石炭や石油を使う火力発電所では違い、少ない費用で電力を生産できる。
労働新聞1月9日付はこのように自力更生の精神で経済建設を推進させ、「農業と石炭工業、電力工業と鉄道輸送、金属工業など社会主義経済建設のすべての分野を活性化させようとするのが総書記の決心」)であると強調している。
各部門に具体的指示
電力問題、すなわちエネルギー問題を解決することは、食糧問題解決と並んで緊要な問題として提起されている。
今年の共同社説でも、「至る所で中小型発電所の建設を大衆運動として力強く推し進めなければならない」と強調された。
電力問題が解決してこそ、肥料生産を伸ばすことができ、工場をフル稼働させて日用品などの一般消費物資も数多く生産して、農業と軽工業を発展させて人民生活を向上させられる。
朝鮮中央通信など公式報道にはないが、総書記は人民経済各部門にも様々な具体的な指示、指導をしている。
総書記は錦繍山記念宮殿を訪れた後、石炭工業部に指示を与えた。また昨年には「石炭の生産量を1日当たり8〜10万トンに上げるなど具体的な指導を行った」。同部のキム・ジョングン副部長が年始に平壌駐在の本社記者に語ったことだが、その他の各経済部門に対しても具体的な指示をしている。
「1月4日に教示があり、昨年の総動員期間の総括をきちんとしなくてはならないと指摘した」(国土環境保護部のキム・ハククォン副部長)、「1月5日午前6時にも、金正日総書記から鉄道運輸部門に対する指導があった」(鉄道部のキム・ヨンサム参謀長)、「1月中旬から行う農業活動家の原理講習会も総書記の指導によるもの」(農業委員会のチェ・サンビョク副委員長)、「人民生活向上の問題だから関心が高く、昨年末と年始にも指導があった」(軽工業委員会のリ・ビョンリム副委員長)、「金正日総書記は昨年6月22日、鉄鋼材生産を経済復興の中心課題として力強く推進していくための重要な指針を示した」(金属工業部のチョン・スンフン副部長)。
つまり総書記は、年末年始に各経済部門の活動家に対して直接的な指導を行い、「新年の辞」に代わる現地指導を通じて、自力更生で経済建設を推進しなければならないことを改めて強調したのだ。
中小発電所建設で電力解決へ/発展の土台築いた慈江道
全国で学ぶべき模範
労働新聞、朝鮮中央通信など共和国の各メディアによると、総書記は1月16日から21日の6日間にわたって慈江道を訪れ、人民経済各分野に対する指導を行った。これは主席逝去後、人民経済に対する総書記の現地としては初の公式報道である。
党慈江道委員会の延亨黙責任書記、党中央委員会の金国泰、金己男、金容淳の各書記、党中央委員の朴松奉、李容哲、張成沢の各第1副部長らが同行した。
地方の経済を6日間も指導するのは異例である。では慈江道の経済建設でどのような成果があったのか。
同道では、緊要な電力問題を解決するため、海抜が高く河川が多いという地域の特性を生かして、大小の河川に様々な形態の中小型発電所(1万キロワット)を多数建設し、そこで生産される電気で暖房完備の住宅を建てるなど人民生活向上と、経済の飛躍的発展をもたらすための強固な土台を築いた。
総書記はまず、江界市と長江郡、城千郡に建設された長江1号、2号発電所、長者山発電所、北川江発電所、南里発電所、外中発電所など数多くの中小型発電所を見て回った。
発電所の形態は、水の落差を利用する水路式の発電、メタンガスを利用したメタンガス発電など様々だ。労働新聞1月26日付によると、北川江発電所は、長江郡の北川江支流に丸太と赤土で堤防を築き、一定の落差を作って建設された。セメントや鋼材を使わなくて済む。ここで生産された数十キロワットの電力は長江高等農業専門学校などに送られている。また、代用燃料を利用した発電所は、水がない所でも建設できる発電所だ。 道内では、昨年3月から8月の間にこのような発電所を29カ所に建設した。これによって同年9月現在、170余の地方産業工場と2万1300戸の住宅の照明、1700余世帯の電気暖房用の電力が解決された。
慈江道では合計、463カ所に中小型発電所を建設する計画で、その総発電能力は約77万 に達する。労働新聞1月29日によると、道では最近だけでも30余カ所に新たに中小型発電所を建設した。
総書記は90年9月24日、水力発電所を建設するため国内の水力資源を調査するよう課題を与えた。昨年11月には建設で提起される問題を把握し具体的な対策も示した。
同道を訪れた総書記は、「中小型発電所を建設して電力供給が増えれば養魚もできるし、風景も美しくなり、いろいろ良い」と述べ、「すべての道、市、郡で慈江道の模範を積極的に学ばなければならない」と強調した。
毎年500ずつ建設
電力工業部のチュ・ドンイル副部長によると、共和国では現在、全国的規模で中小型発電所建設が進められており、昨年までに約300カ所完成し、今後は毎年500ずつ建設していくという。
黄海北道では、発電所を180余に増やす目標を立て、山間、平野を問わず水の流れる至る所に発電所を築いた。
慈江道と両江道、咸鏡南道では、河川を利用して水車式、階段式の中小型発電所建設を大々的に行っている。両江道大紅湍郡では階段式の四つの発電所を建設することによって、地方産業工場と住民用の電力を供給している。
また同道と黄海南道の甕津(オンジン)総合農場では、80余の水車式と潮水力による発電所を建設した。国内有数の穀倉地帯である黄海南道青丹郡では、貯水池の水を利用して階段式の発電所を建設し、水田用の揚水機の電力を保証している。
平安北道では、海岸地帯の特性に合わせて、すでに40余の風力発電所を建設した。
人民生活向上を
総書記はまた、慈江道内の江界トラクター、2月製鋼、2・8機械、江界精密機械の各連合企業所を見て回り、生産状況を把握した。
ほかにも穀物生産と共に地域の特性に合わせて養蚕など工芸作物の生産に力を注いで工業原料をより多く生産することや、国土管理事業を立派に行うことなど、人民生活を向上させるうえで提起される課題を示した。
このように共和国では、何よりも自力で各地に発電所を建設して電力問題を解決するなど、自力更生の精神で社会主義経済建設を推進しようとしている。電力問題を解決して社会主義経済建設を遂行するための土台が確固と築かれれば、「経済が活性化され、社会主義の優越性が全面的に高く発揚」(共同社説)されよう。(基)