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金正日総書記 今年の活動


 9月5日の最高人民会議第10期第1回会議で「国家の最高職責」である共和国国防委委員長に推戴された金正日総書記は今年も精力的に各地の朝鮮人民軍部隊を視察し、工場を現地指導した。総書記の今年の活動を政治・軍事、経済、南北関係に分けて振り返った。(聖)

 

政治・軍事

共和国国防委委員長に推戴/緊張高まる中、国防を強化

 金正日総書記の動きで今年最も注目されたのが、最高人民会議第10期第1回会議で共和国国防委委員長に推戴されたことだ。

 国防委委員長は「国の政治、軍事、経済力量を総体的に統率指揮し、社会主義祖国の国家体制と人民の運命を守護し、防衛力と全般的国力を強化発展させる活動を組織指導する国家の最高職責」(金永南最高人民会議常任委委員長)だ。修正・補充された社会主義憲法で「金日成同志を永遠の主席」としたことで事実上国家主席制度が廃止されたことと合わせて考えると、総書記は党(総書記)、国家(国防委委員長)、軍(最高司令官)の最高首位についたことになる。

 「革命武力の創建と強化発展に優先的意義を付与し、軍の力に依拠して革命と建設を展開する」先軍思想に基づき、共和国は政治、国防、経済など社会主義建設すべてを朝鮮人民軍を中心に推し進めてきた。それは総書記の現地指導に如実に表れている。

 12月20日現在、朝鮮中央通信で伝えられる総書記の動向は74回(労作発表、電報送付は除く)。このうち軍関係は46回と全体の約62.1%を占める。昨年の48%に比べて格段に増えている。中でも軍部隊訪問は27回に達する。社会主義堅持のために孤独なたたかいを続ける共和国への国際的圧力は日増しに高まっており、北を仮想敵国とした米、日、南朝鮮の合同軍事演習も相次いでいる。人工衛星打ち上げ、地下施設問題浮上以降はとくに緊張が高まった。

 そうした中で軍最高司令官である総書記が軍部隊を頻繁に視察するのは当然だ。総書記は年初から軍事境界線付近(最前線)を守る軍部隊を中心に訪れ、日増しに高まる挑発策動に対処して部隊の戦闘力をさらに強化し、防御を鉄壁に固めるうえで指針となる様々な課題を示した。

 軍隊は経済建設の要でもある。

 大規模なプロジェクトは軍隊が遂行し、農村支援にも動員されている。総書記は今年、軍人らが建設した製塩工場を視察。ここで生産される塩を人民にも十分供給しなければならず、海に面したすべての道で自力で製塩工場を建設しなければならないと語った。

 

経済

エネルギー、食糧解決に尽力/企業所経営管理は社会主義原則で

 労働新聞、朝鮮人民軍両紙の元旦の共同社説は「われわれは朝鮮式社会主義の砦を経済的に確固と築いていかなければならない」としながら、「経済建設はわれわれが新年に最大限に力を注ぐべき主な戦線」だと強調した。朝鮮式社会主義を堅持するためには、経済問題克服が鍵であることを示したわけだ。

 そこで改めて強調されたのが、重工業を優先的に解決させながら軽工業、農業を同時に発展させる党の経済建設の基本路線を堅持することだ。

 金正日総書記の動向でも経済部門に関する指導が目立った。とくに慈江道、咸鏡北道、両江道など最北端への現地指導が相次いだ。

 今年力を入れるべき部門として提示されたのが農業、石炭、電力、鉄道運輸、金属工業だ。総書記は中小型発電所、製鋼連合企業所、電気連合企業所、機械総合工場、協同農場、自動車工場などを訪れており、前述の部門を解決するための指導を徹底させていることが分かる。

 とくに慈江道への指導は1月16〜21日を皮切りに4回にわたった。総書記が今年初めて同道を訪れた際に評価したのが、中小発電所を多く建設してエネルギー問題を自力で解決し、住宅への暖房供給をはじめ人々の生活に必要な電力を十分に供給していることだった。

 エネルギー、外貨、食糧などすべてが不足する共和国では、各道が自力で基本的な物資を調達しなければならない。中小発電所建設などでそれをいち早く解決したのが慈江道だ。そのため、総書記は慈江道の模範を全国に一般化するために、自力更生を中心内容とする「江界精神」を生み出した。8月までに全国で建設された中小発電所は3270ヵ所に達する。

 10月22日に慈江道満浦市内の鴨緑江タイヤ工場を指導した際には、社会主義経済建設で新たな飛躍を達成するための強行軍時代に堅持すべき企業所運営方式を示した。その中で総書記は社会主義市場がなくなり、周辺諸国が資本主義貿易を行っている条件のもとで、企業所の経営管理は社会主義の原則に基づきながらも、貿易は資本主義諸国を相手にしなければならないと述べた。

 農業問題では7月1日に田植えを終えた全農業勤労者に感謝の電信命令を送り、穀物増産のために果たすべき課題について具体的に指示。穀物生産量は少しだが昨年より増加した。

 10月1日の両江道大紅湍郡の指導では、農業科学研究院のじゃがいも研究所を訪れた。コメに代わる主食としてじゃがいもなどの多収穫作物を一時的に利用することで、食糧不足の解消も可能だ。

 今年、共和国は初の人工衛星打ち上げに成功したが、この指導にあたったのも総書記だ。総書記は以前から自力で宇宙開発分野を開拓する設計図を示し、科学者たちが難関に直面した時も、成功を信じると励ました。こうした指導により、衛星運搬用多段式ロケットが1980年代に開発された。今回打ち上げられた「光明星1号」と運搬ロケットはすでに6年前に開発されていた。

 そして、総書記の決定により最高人民会議第10期第1回会議と建国50周年を前に、100%国産の衛星が打ち上げられた。総書記は9月8日、衛星打ち上げを成功させた科学者、技術者らに感謝文を送った。

 科学技術の発展に力を入れている総書記は全国プログラムコンクール・展示会も視察した。

 

南北関係

民族大団結5大方針示す/民間経済交流に意欲

 南北問題ではまず、南北連席会議50周年記念中央討論会宛てに書簡「全民族が大団結し、祖国の自主的平和統一を達成しよう」(4月18日付)を送ったことが上げられる。この中で、金正日総書記は@民族自主の原則を堅持するA愛国愛族の旗印のもとに団結するB南北関係を改善するC外勢の支配と干渉に反対するD全民族が接触、対話して連帯・連合を強化する――という「民族大団結5大方針」を提示した。

 ここには、50年以上分断状態が続く中で思想、政見、制度を超越し、民族の団結した力で統一を実現しようとの金日成主席から受け継いだ総書記の統一への思いが込められている。

 2月の金大中「政権」発足後、初めて発表された論文が統一問題に関するものであったのは興味深い。

 書簡発表後の6月10日、共和国では5大方針貫徹のための当面の対策を討議する政党・団体代表者会議が開かれ、「民族の和解と団結、統一のための大祭典」を8月に板門店で開くことが提起された。

 だが、南当局はこれを受け入れなかったばかりか、同会議に参加し南に戻った学生、宗教家らを「国家保安法」違反で拘束。南の反北対決姿勢のため当局間対話に進展は見られない。

 逆に民間交流は活発に繰り広げられた。

 とくに注目されたのが、総書記が訪北した現代グループの鄭周永名誉会長一行と会見したことだ。鄭会長一行は今年3回(6月、10月、12月)板門店経由で訪北。総書記の会見は10月30日だった。

 鄭名誉会長の宿舎に出向いての45分にわたる会見の中で総書記は、金剛山観光や石油開発の問題など民間レベルの南北経済交流について話し合った。現代側は訪北中、金剛山観光事業のほか9項目の南北経済開発協力事業を推進することなどで北側と合意。11月の第1陣を皮切りに金剛山観光事業は順調に進んでいる。

 総書記が「国家の最高職責」である国防委委員長に推戴された後、初めて会見した相手が鄭会長であったことは、統一対話への総書記の意欲を示すものだ。