阪神・淡路大震災もうすぐ4年/困難続くケミカル業界、協同組合化に活路
1995年1月17日の阪神・淡路大震災からもうすぐ4年。神戸市の地場産業のひとつで多くの同胞が携わるケミカルシューズ業界は、震災のダメージと不況の追い討ちにより、今も困難な状況にある。そうした中、神戸市長田区の同胞業者5社は事業の協同組合化に活路を求め、材料仕入れから販路の確保に至るまで共同で取り組んでいる。業界では震災後、事業の組合化はこれが初めてと言われており、関係者らの関心を集めている。
協同組合「マックス」をつくったのは株式会社シャープ、株式会社三國製靴、株式会社金谷製靴、アメリカンシューズ、ミリオンシューズの中堅メーカー5社。
長田区内に5階建てビル(延床面積2600平方メートル)を購入し、今年9月から順次入居。今のところ3社が同ビルで操業しており、今年中に残り2社も入居する予定だ。
5社はいずれも、テナントとして入居していた工場が震災で全壊もしくは半壊し、事業に大きなダメージを受けた。長田区と隣接する須磨区の大多数の同胞業者も似たような有様で、震災直後に「ケミカルシューズ関連被害同胞業者の会」を結成。県や神戸市に対し、各種特別融資制度の適用緩和を要請した。
そうする間にも、同胞らは事業再開のために奔走したが、場所探しは難航した。5社も苦労を重ねたという。
そんな中、5社の経営者らに、民団に所属するある同胞が、ケミカルシューズ業者を対象に建てた賃貸ビルを不況のため維持できず売却する考えだという話が伝わった。
3年前、5社はこのビルを共同で購入することで合意。政府系の中小企業事業団の災害復旧高度化資金を利用する方針を固めた。
震災特例融資として設けられたこの無利子融資は償還期限20年、利子据え置き期間5年で、協同組合の設立が必要条件。震災後、仮設工場や賃貸工場で操業していた5社は昨年8月、それぞれの主力商品が競合関係にないこともあり、輸入品との競争を共同化による合理化で乗り切ろうと、組合設立に至った。
その後、県商工会の助けも受けながら、これまでの事業内容、今後の事業計画等に関する書類を作成。中小企業事業団と県の担当部署による診断を受け、最近になって融資が実現した。
ビル購入などの総事業費は約6億6000万円かかったが、そのうち約5億9500万円は、この制度の無利子融資から確保した。
「マックス」は目下、材料の仕入れや送料の共同化を図るなどして経費を節約している。資金繰り・管理・研究でも共同化を進めており、ゆくゆくは通信販売も行う予定だ。
西神戸商工会の会長を務めるシャープの金相圭社長は、「融資を受けるために相当の時間を費した。県商工会の助けでやっとここまで来た。感慨無量の一言だ」と話していた。
現況/生産量は震災前の約半分
神戸市長田区と須磨区に集中するケミカルシューズ関連業者は震災時、地震とそれにともなう火災で深刻な被害を受けた。被災企業は全体の9割に上る。
その後、およそ8割の企業が事業を再開したと言われるが、折からの景気低迷、アジアなどからの廉価商品による市場席巻に悩まされ、生産足数は震災前の半分強に止まっている。
ただし、ファッション性の高い新しい婦人靴の考案など商品開発での努力が実り、単価の上昇から出荷金額は震災前の7割程度まで戻している。