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時事・解説/米国の挑発で緊張する朝鮮半島情勢


 米国がねつ造した共和国の「地下核施設」疑惑騒動によって朝鮮半島情勢が緊迫している。その内容は、「核疑惑施設」に対し、戦略爆撃機ないし巡航ミサイルなどを使った「ピンポイント攻撃」を行うというもの。米国の言う「ピンポイント攻撃」とは全面攻撃、全面戦争を意味する。朝鮮人民軍総参謀部スポークスマンは2日、声明を発表し、「米国が『対話』と『協商』のベールを脱ぎ捨てて情勢を戦争の瀬戸際へと追いやっている重大な事態に対処し、わが兵力は米軍の挑戦にせん滅的打撃で応える」と宣言した。また南朝鮮と日本もその空間に入ることも示唆した。緊迫する朝鮮半島を取り巻く情勢について見た。 (基、根)

 

Q 人民軍総参謀部代弁人声明発表の背景は

A 侵略企図が危険ライン超える/第2の朝鮮侵略戦争計画

   「5027作戦計画」で米国は5段階に分けて共和国「占領」狙う

 朝鮮人民軍総参謀部声明は、共和国を軍事的に抹殺しようとする米国の侵略企図が危険ラインを超えたことに対処して発表されたものだ。

 具体的には、第2の朝鮮侵略戦争計画である「5027作戦計画」が始動段階に入ったことを指す。

 声明によると、この計画は5段階に分けて強行されるという。

 第1段階は「抑制」の段階で、誰それ(共和国)の行動を「抑制」するという口実のもと、南朝鮮と周辺地域に米軍兵力を集結させ、共和国の空中と海上、国境を封鎖するなど本格的な制裁を加える作戦段階である。

 第2段階は「武力化打撃」の段階で、膨大な野戦砲兵武力と飛行隊、巡航ミサイルで共和国全域に対する長期的な空中打撃戦による「無力化」を狙った作戦段階である。

 第3段階は「地上攻撃作戦」の段階で、共和国の東西両海岸への大規模上陸作戦と空挺作戦、ヘリ陸戦作戦、特攻隊作戦を組み合わせた全面的な地上攻撃作戦で、平壌に対する包囲を実現し、清川江(平安北道)ラインまで「占領」する作戦段階である。

 第4段階は「戦果拡大」の段階で、清川江以北の共和国全域を「占領」し、第5段階は「終戦」の段階で、「自由民主主義体制下の統一」を実現するとなっている。

 つまり社会主義を崩壊させる武力による「吸収統一」だ。

 計画には戦争勃発の方法として @核問題と人権問題を口実に制裁を加える延長線上で打撃を加える A共和国の「核疑惑施設」に対する「外科手術式」の打撃を加える B情勢を引き続き緊張させてその悪化を口実に先制打撃を断行する――の3種類が設定されている。

 

 

Q 北侵戦争計画が始動したといわれるが

A 第1段階の封鎖作戦が本格化

   米大統領が「軍事的措置」まで言及/前面実行への「最終シグナル」

 「5027作戦計画」の第1段階「抑制」は、南朝鮮と周辺地域に米軍兵力を集結させ、共和国の空中と海上、国境を封鎖し制裁を加える作戦だが、これは7月末に本格化している。

 米軍主導のもと日本や南朝鮮などが参加したリムパック98環太平洋合同軍事演習(7月6日から1ヵ月間)実施中だった同月20日から、米国は南に対する「武力浸透」を防ぐとの名目で太平洋司令部所属のカール・ビンソンをはじめ原子力空母と攻撃用原子力潜水艦と兵力の朝鮮半島近海への緊急移転を展開した。

 7月25日の朝鮮中央通信社声明は、「米国はプエブロ号事件(68年)やEC121機事件(69年)を起こした時も、南で政治的空白期が生じて人民抗争が起こった時も今回のように核装備と兵力を共和国近海に集中配備したことはない」とし、米国の軍事的動向は傍観できないと警告。つまり計画の第1段階はすでに施行されているのだ。

 さらに米国は南との98フォールイーグル合同軍事演習(10月26日〜11月6日)に続いて、日本とはキーン・ソード99演習(11月2〜16日)を朝鮮東海で展開した。両演習には、長距離飛行と交戦相手国の縦横、後方に深く侵入して攻撃できるB1B戦略爆撃機が参加した。これは「2つの演習が一本に結ばれ朝鮮戦争シナリオに基づき演出し、B1Bが共和国を攻撃目標に動き回っている」(労働新聞2日付)ことを示す。つまり飛行機や巡航ミサイルで共和国全域に対する空中打撃戦を行う第2段階「武力化打撃」に伴う演習(7日発朝鮮中央通信)だったのだ。

 一方、クリントン米大統領は小渕首相との会談(11月20日)で、共和国が「地下核施設」査察に応じない場合の対処措置として、武力行使を視野に入れた「軍事的措置」に言及した。これは計画実行のための「最終シグナル」(8日発朝鮮中央通信)である。

 

Q 日本や南朝鮮も関わっているというが

A 米・日・南が連動して北侵戦争演習

   軍事的脅威はむしろ日本や南朝鮮から/横須賀米軍基地は「前線の指揮拠点」

 日本では、米国の戦略に乗せられて「北の脅威」が叫ばれているが、共和国にとって、脅威はむしろ日本や南朝鮮から来ている。

 現在、南朝鮮軍の総兵力は約373万人で、日本の自衛隊は約24万人。さらに、駐南米軍と在日米軍はそれぞれ約3万7000人ずつおり、米軍は北東アジア全体で10万人規模を維持している。今年もこれらの大規模な兵力が連動して、北侵戦争挑発に向けた様々な合同演習を繰り広げ、三角軍事一体化を一層強化した。

 米・南合同軍事演習と98フォール・イーグル、南朝鮮軍演習の花郎、米・日合同統合訓練キーン・ソード99は、10月末から11月初めにかけて同時期に展開された。フォール・イーグルには駐南米軍3万5000余人と南朝鮮軍5万余人、花郎には南朝鮮の正規・非正規兵力110万余人が動員されるなど、規模も大きい。さらには、7月に環太平洋6ヵ国が参加するリムパック98合同軍事演習、8月には指揮所演習の乙支フォーカスレンズが行われた。

 これらの演習はすべて連動して行われた。フォール・イーグルに参加した米軍の戦略爆撃機B1Bはキーン・ソードにも参加。米・南合同軍事演習には駐南米軍と南朝鮮軍のみならず、空母キティホークやミサイル巡洋艦ビンセンス、強襲揚陸艦ベローウッドなど多くの在日米軍兵力が動員された。米・日・南が共和国と言う同一の標的に向けて、完全に同じレール上で動いている。

 さらに、在日米軍と在日米軍基地が共和国に与える脅威も見過ごせない。

 現在、日本にある米軍基地は三沢、沖縄、横須賀、厚木、横田、佐世保、岩国などで、朝鮮戦争以来、米国の対朝鮮侵略政策遂行のための主要兵站補給基地、出撃基地と化してきた。

 新しい「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)では、米・日の軍事協力の範囲が「周辺有事」にまで拡大されている。これは、日本が朝鮮半島をはじめアジア全域での米国の軍事行動を後押しするばかりか、米軍とともに直接参戦する道を開いたことを意味する。

 11月の米・南合同軍事演習の際に、横須賀基地の米第7艦隊旗艦ブルーリッジが直接、指揮した。在日米軍基地は今や単なる補給・出撃基地にとどまらず、「前線の指揮拠点」になっている。

 日本は「北の弾道ミサイルは日本全土を射程圏内に収める」というが、共和国は射程1300キロの巡航ミサイル、トマホークの射程圏内にある。横須賀を母港とする巡洋艦モービル・ベイや駆逐艦カーチス・ウィルバーなどにはトマホークが搭載されており、共和国全土が射程圏内に含まれる。

 

Q 93年の「核疑惑」時に匹敵するほどと言われるが

A 当時は朝米基本合意文調印で全面戦争の危機を回避

   しかし米国は約束通りに合意文を履行せず

 米国がありもしない共和国の「地下核施設」疑惑をねつ造してその「査察」を求めているため、今、朝鮮半島情勢は極端に悪化している。これは1993年の「核疑惑」時に匹敵するものだ。

 今の情勢の背景や本質を知るためにも、当時、「核疑惑」がどのように浮上し、そしていかに解決されたかを見てみよう。

 「核疑惑」が浮上したのは、89年1月26日付香港ファーイースタン・エコノミック・レビューが、米国筋の情報として「北朝鮮が核兵器を開発している」と報じたことに端を発する。

 その後、朝米がニューヨークで初の高位級会談(1992年1月22日、金容淳書記とカンター国務次官が出席)を行った後、国際原子力機関(IAEA)による特定査察が同年5月から翌93年1月まで6回、実施されたが結局、核開発の証拠は見つからなかった。にもかかわらず米国主導のIAEA理事会は93年2月25日、3月25日までに「特別査察」受け入れを共和国に求める決議を採択する一方、米国は同月9日から南朝鮮と大規模核戦争演習、チーム・スピリット93合同軍事演習を強行して情勢を一層緊張させた。

 金正日朝鮮人民軍最高司令官はこれに対処して同月8日、翌9日から全国、全民、全軍が準戦時状態に入るよう宣布する命令を下した。さらに共和国は同月12日、国の最高の利益を守るために核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明した。

 このように緊張状態が高まる中、朝米は共和国のNPT脱退効力が発揮(6月12日)される10日前の2日に会談を開始し、11日には朝鮮半島の核問題で提起される原則的問題を討議、合意した朝米共同声明(米国は共和国に対し核威嚇を行わないことを保障)を発表した。そして翌94年6月16、17日には、金日成主席が平壌に招待したカーター元米大統領と会談して米国の対朝鮮政策転換の契機を作った。同年7月の主席の逝去で朝米協議は一端中断するが、10月に再開された。21日、朝鮮半島の核問題解決と国交正常化のプロセスを明記した朝米基本合意文が調印され、全面戦争の危機は回避されたのである。

 朝米基本合意文調印からすでに4年がたった。共和国は合意事項を誠実に履行しているが、米国は経済制裁を完全には解除していない。重油提供が滞り、軽水炉建設も大幅に遅れるなど米国側の約束が守られていないのが現実だ。

 

Q 地下施設「査察」受け入れ拒否なら合意破棄というが

A 戦争実行のための口実

   「核関連」の確証なく、「疑惑」のみ一人歩き/合意文には査察取り決めない

 米国は「5027作戦計画」に伴い戦争を挑発するための口実作りとして、朝米基本合意文破棄をちらつかせ、共和国に圧力を掛けている。

 では「地下核施設」疑惑の真相はどうなのか。これも「核疑惑」と同じ構図である。米情報当局から説明を受けた複数の米政府関係者の話として、米紙ニューヨーク・タイムズ8月17日付が「北朝鮮が新たな核兵器開発計画の中心と見られる地下施設を建設している可能性がある」とか「建設するつもり」などと報じたことがきっかけだった。その情報が米、日、南でキャッチボールされ、まるで「事実」であるかのように「疑惑」が拡散されていった。

 11月16、17日に行われた平壌での朝米協議で共和国は、米国の言う「地下核施設」とは「疑惑」があるだけだとし、米国の査察要求を一蹴した。しかし協議は12月4日から、ニューヨークの米国連代表部、ワシントンの国務省と場所を変えて断続的に行われ、日程も延期された。

 一方、米国の強硬保守勢力は、共和国が朝米基本合意文に違反しており、「査察」が行われなければ合意文を破棄し、「断固たる対応」をすると威嚇している。

 しかし合意文には「査察」の取り決めがない。米国による合意文破棄は本質において朝鮮半島の核問題を解決せず、国交正常化もせず、情勢を「核疑惑」解決以前の状態に戻すことを意味する。つまり共和国との戦争も辞さないとの宣戦布告に等しい。

 4日から行われている朝米協議で共和国は「当初、主張していた地下施設の査察に対する補償要求を取り下げ、経済制裁の緩和を求めるなど、柔軟姿勢を示唆している」(東京新聞11日付)と言う。