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国連人種差別撤廃委員のファン・ボーベン氏、大阪朝鮮第4初級学校を訪問


 国連人種差別撤廃委員会の委員を務めるオランダの法律家、テオ・ファン・ボーベン氏(64)が11月28日、大阪市生野区にある大阪朝鮮第4初級学校を訪れた。在日本朝鮮人人権協会近畿地方本部と府朝鮮人強制連行真相調査団が、民族教育の内容とともに資格や助成面で制度的差別がある現状を知らせようと、大阪市で開かれた「アジア太平洋人権教育国際会議」(25〜27日)に出席した同氏を招請したもの。この日は個人の資格での訪問となったが、国連関係者が朝鮮学校を訪れたのはこれが初めて。

 ファン・ボーベン氏はまず、金大守校長から朝鮮学校の歴史やカリキュラムの説明を受け、教室を回って授業を参観。生徒らの小公演を見た後、学校関係者や市教委メンバー、菊植潤・生野区長ら行政関係者と懇談した。

 同氏は、「マイノリティが自らの民族の言語、文化、伝統を守り発展させる権利は決して侵害されてはならない」「朝鮮学校への差別は明らかに人種差別に当たる。日本政府には国連の場で是正を求めたい」などと指摘。来年、人種差別撤廃条約の遵守状況に関する日本政府の報告書が委員会に提出される際には、在日朝鮮人の民族教育を巡る問題に関心を注ぎたいと話していた。

 ファン・ボーベン氏は国際法の権威で、1993年には国連人権委員会・差別防止少数者保護小委員会で「従軍慰安婦」問題と関連し、被害者には加害国家に賠償を請求する権利があり、加害国家には行為の責任者を処罰、被害者を救済する義務があるとする研究結果を特別報告官として報告。翌年の人権委員会ではこの報告に基づいた決議が採択されるとともに、対女性暴力特別報告官制度が承認され、以降、国連の場で日本政府に対する厳しい追及が続いている。

 同氏はまた、かねてから在日朝鮮人の民族教育への制度的差別の問題にも関心を示しており、昨年の人権小委に総聯代表が参加して現状を訴えた際には、「(人種差別撤廃委の審議にも)朝鮮学校の代表が必ず参加し、発言すべきだ」と話していた。

 【注】人種差別撤廃委員会は、人種差別撤廃条約批准国の政府報告や通報に基づいて条約違反を審議する。同条約は加盟国に対し、個人、集団、公益団体が人種差別の行為・慣行に従事しないようにし、国や地方公共団体が立法を含むあらゆる手段により人種差別を禁止し終わらせる義務を課している。