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本の紹介/「遥かなるアリランの故郷よ」 栃木県朝鮮人強制連行真相の記録


 1996年2月、栃木県の情報公開条例に基づき、第2次世界大戦中に県内に強制連行された朝鮮人労働者の氏名、生年月日、工場事業所名などが記載された「知事事務引継ぎ書」が開示された。これを契機に同年7月、栃木県朝鮮人強制連行真相調査団が発足し、調査活動が実施された。

 本書は、同調査団発足以前の予備調査活動の段階までを含めた現時点における調査報告をまとめたものである。

 調査対象は「知事事務引継ぎ書」に記載されている鉱山、工場、土木事業所だけでなく、軍事機密となっている軍事地下工場、地下飛行場の跡地など広範囲にわたっている。

 本書は調査編、証言編、資料編、論証編で構成されているが、証言編中に掲載された当時の日本人監督、南朝鮮にいる7人の足尾銅山連行被害者、在日朝鮮人の鄭雲模さんの証言が生々しい。また、論証編では駒沢大学の古庄正教授が書いた「足尾銅山朝鮮人強制連行と前後処理」によって、詳細な強制連行の全容と、足尾銅山側の戦後処理についても把握できる。

 調査団の猪瀬建造さんは「この報告書はあくまでも中間報告書の形で世に問うことしかできないが、私たちはこの真相調査活動を通じ相互の友情に依拠しながら、ともに学び、ともに行動することの大切さを実感した」と指摘している。

  2000円、随想舎、栃木県宇都宮市材木町3−3、TEL 028−633−0489