時事・解説/「核関連地下施設」疑惑を斬る
共和国の地下施設問題と関連した朝米間の平壌協議が11月16、17日に行われた。これと関連して共和国外務省スポークスマンは24日、米国が「疑惑」があるとして平安北道大館郡金倉里の地下施設への無条件査察を求めたことに対し、「共和国には寧辺地区の凍結した施設以外にいかなる核関連地下施設もない」と一蹴したと語った。この問題の真相、今後の行方などについて見た。(基)
Q 米国は無条件査察を要求したが
A 寧辺地区の凍結した施設以外に核関連地下施設はない
米国は今回の平壌協議で、平安北道大館郡金倉里にある地下構造物が核関連施設であるとしながら、査察を要求した。しかし米国の言う「地下核施設」とは疑惑説があるだけで、共和国は米国の主張を事実無根であると一蹴した。共和国外務省スポークスマンは11月24日、「寧辺地区の凍結した施設以外にいかなる核関連地下施設もない」と強調している。
共和国は協議に先立ち米国の言う「地下核施設」とは徹頭徹尾、「民需用地下構造物」であると主張してきた。朝鮮戦争時に米軍の激しい空爆を受けた経験から、共和国には地下施設やトンネルが数多くあるのは事実だ。
1993年から94年まで朝米交渉に参加し、これまで10数回にわたって訪朝している前米国務省朝鮮分析官のキノネス・アジア財団代表も、共和国に地下施設があるのは「極めて正常な状況」だと指摘。「工場も山のふもとの地下に建設しているため、工場からの煙りは煙突からではなく山のふもとから出ている。また米国が連絡事務所として使用する予定の建物の下にも、地下待避所がある」(南朝鮮の雑誌「マル」11月号)と語っている。
また「疑惑」があるからと言って、米国の査察を受け入れねばならないいかなる義務も共和国にはない。朝米間の協定や合意文としては、53年7月の朝鮮停戦協定、93年6月の朝米共同声明、同年8月の朝鮮戦争時に死亡した米兵の遺骨発掘問題に関する合意書、94年10月の朝米基本合意文などがある。だがいずれの合意事項にも「査察」を義務化した規定はない。
米国務省高官は11月10日、「北朝鮮がわれわれの憂慮を解消できない場合、米国はジュネーブ合意の義務を履行しない権利を持っている」(東京新聞11月17日付)と、「査察」問題と朝米基本合意文履行問題を無理やり結び付けようとしている。
これについて朝鮮問題専門家のセリグ・G・ハリソン・米20世紀財団研究員は地下施設の問題が基本合意文とは何の関連もないと力説。同氏は同紙11月22日付への寄稿文の中で、「米国内の強硬派は、朝米基本合意文には、金倉里の地下施設やそれ以外の疑わしい場所をすべて査察できるという権利が付与されているという、誤った主張をしている。しかし基本合意にはそのような規定はない」と明白にした。
Q 「核関連」と言い張る証拠はあるのか
A 武装解除を狙ったもので自主権侵害、内政干渉行為
米国は金倉里にある地下構造物が「核関連施設」であるとして「疑惑」を呈しているが、「核関連」という確証は何もない。
カートマン朝鮮半島平和会談担当大使も11月19日に「十分な証拠」があるとしていたが、2日後に「確証はない」(朝日新聞11月21日付)と発言を修正している。
現南朝鮮執権者も同月20日の記者会見で、「核施設という疑惑だけがあり、確証はない」(「韓国日報」11月21日付)と言う。
「疑惑」は米情報当局によって意図的に広められたものだ。米紙ニューヨーク・タイムズ8月17日付が米情報当局から説明を受けた複数の米政府関係者の話として、「北朝鮮が新たな核兵器開発計画の中心と見られる地下施設を、建設している可能性がある」と報じたことがきっかけだ。同紙によると、「米情報当局は、そのほかの情報を総合し、北朝鮮が地下に原子炉と再処理施設を建設するつもりだと米議会や韓国政府関係者に伝えた」と言う。
「建設する可能性」や「建設するつもり」などの推測が、米情報当局によって米議会内などの強硬派に伝えられ、まるで「地下核施設」が既成事実であるかのように拡散されたのだ。
「疑惑」の情報について前米国務省朝鮮分析官のキノネス・アジア財団代表は、「情報は国家偵察局(NRO)が偵察衛星で撮影した写真情報をパターンにしたもので、誰かが意図的に流出する前には表には出せないもの」(東亜日報11月24日付)と、その背景に政治的意図があることを示唆している。
米国が「疑惑」を呈して査察を求めるのは、共和国の武装解除を狙ったものにほかならない。
つまり、今日は1ヵ所を「査察」し、明日はそれを前例にして10、20ヵ所の施設を「査察」しようとするのが米国の本心だ。こうした方法で「共和国をまる裸にしようとするのは、自主権に対する公然たる侵害、乱暴な内政干渉行為」(労働新聞11月13日付)である。
朝米はいまだに交戦関係にある。敵対国である米国が自らの情報資料を確認するために「査察」を受け入れろということ自体、不当である。
米国は「査察」を受け入れねば、朝米基本合意文を破棄することまで示唆している。
先に述べたように査察問題と合意文履行問題は関係ない。これで合意文が破棄されれば、そこから生じる結果については全的に米国が責任を負うことになる。
Q 現地訪問はありえないのか
A 中傷・冒とくした代価として補償するなら、特例として1回だけ許す
地下施設について共和国は、米国がどうしても見たいというのならば見せてもよいと再三、明らかにしてきた。今回の平壌協議でも「米国が共和国を中傷・冒とくした代価としてそれ相応の補償をするならば、朝米関係を考慮し、1回だけは特例として現地訪問を実現する問題を検討できるとの立場」(外務省スポークスマン)を明らかにした。
しかし共和国のこのような雅量ある立場を悪用し、米国がさらにあれこれ見るというならば、考慮して見せようとした対象までも見せることはできないとも言っている。それは内政干渉として問題の性格が完全に変わってしまうからで、自主権を重視する共和国にとっては到底受け入れられないからだ。
12月4日から8日までニューヨークとワシントンで次回朝米協議が行われるが、問題の解決は米国の対応次第である。