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自主路線を歩む―共和国の経済戦略/(下)自立的民族経済


自国の富、資源、人民の力で

 9月5日に最高人民会議第10期第1回会議が開催されてから約2週間後の17日、朝鮮労働党中央委員会機関紙の労働新聞、党理論誌の「勤労者」による共同論説が発表された。題目は「自立的民族経済建設路線を最後まで堅持しよう」。

 金正日総書記が「国家の最高職責」である共和国国防委員会委員長に推戴された会議の直後に発表された論説で、自立的民族経済建設路線の堅持をうたったことは、今後の共和国の経済戦略を分析するうえで参考となる。

 

閉鎖経済ではない

 自立的民族経済建設の目的は、富強な国の建設と人民生活の向上に必要なすべての生産物を基本的に国内で生産・供給することだ。

 この目的に沿って、@多面的かつ総合的な経済構造を確立し A人民経済の全部門を現代的技術で装備し B自立した原料・エネルギー基地を構築し Cその国・民族の技術幹部によって運営される経済を建設すること――が基本的内容とされる。

 ただ、ここで誤解してはならないのは、自立的民族経済=閉鎖経済ではないことだ。共和国はこれまでも対外貿易を推進し、自国にない原料・資材、商品を購入してきた。「現実発展の要求に即して軽工業も発展させ、対外貿易も拡大しなければならない」(労働新聞・「勤労者」の共同論説)のは今も変わらない。

 しかし、外資依存型の経済政策を取れば、それは経済のみならず政治的従属をも招く結果になる。債務不履行(デフォルト)の危機に陥った南朝鮮が国際通貨基金(IMF)の支援を受け入れてから1年が過ぎた。米政府は10月、南朝鮮がIMFの資金で国内産業を支援する場合、IMFの南朝鮮への救済金融を中断するようにした。IMF資金が国内産業に使われていないかどうかは米財務省が確認する。このこと一つを見ても、他国の経済的従属下に置かれれば、手足を縛られる結果になることがわかる。

 

試練にも打ち勝てる

 したがって、共和国は経済が他国の付属物に転落することを防ぎ、内需重視の経済構造を確立することを目的とする自立的民族経済路線の堅持をうたっている。

 「経済的に自立してこそ国の独立を強固にし、自主的に生きることができ、思想におけるチュチェ、政治における自主、国防における自衛を確固と保障し、人民に豊かな物質文化生活を整えることができる」(金正日総書記)わけだ。

 共和国の経済が一時的に困難な状況にあるにもかかわらず、社会主義を堅持し得る大きな要因はここにある。

 貿易総額の70%を占めていた東欧・ソ連社会主義諸国の崩壊で、国内で賄えない原料・資材が入りにくくなった。資本主義経済との貿易が中心となったことにともなうバーターから現金決済(ハードカレンシー)への変更は急激な外貨不足を招くことを意味した。

 だからと言って、IMFの支援を受けるロシアのように、国家破産の危機にはない。

 それどころか、今年8月31日には100%国産の人工衛星打ち上げを一度で成功させ、潜在的経済力、科学技術力を示した。世界でも9番目となる快挙だ。労働新聞・「勤労者」の共同論説は、「『苦難の行軍』の困難な時期においても、最先端技術をはじめ科学技術の各分野を発展させてきたし、経済土台を効果的に利用するうえで提起される科学技術的問題を解決した」と自負した。米国などによる数十年に及ぶ経済制裁を受けながらも、社会主義体制を堅持している。

 このことは、「わが国の経済の自立性に問題があって経済的困難を経ているのではなく、逆に自立性が強いからわれわれが今のような試練に打ち勝てる」(労働新聞・「勤労者」の共同論説)ことを示すものだ。

 

自力更生の精神で

 こんにち、自立的民族経済を遂行するうえで要求されるのが自力更生の精神だ。自力更生とは、自国の革命は基本的に自己の主体的力量に依拠して完遂しようとする立場、自国の建設は自国民の労働と自国の富と資源で行おうとする自主的立場だ。

 金正日総書記が年初から4回にわたって慈江道を現地指導したのも、ここが自力更生の模範になっているからだ。慈江道では一昨年から、エネルギー問題を解決するために自力で中小型発電所を建設し、工場を稼働させるエネルギー、道民の暖房問題などを解決した。この模範を各地に浸透させる意味で生み出されたのが、慈江道の道所在地からとった「江界精神」だ。

 共和国では今後も自力更生の精神に基づき、自立的民族経済建設路線を最後まで堅持していくだろう。(聖)