劇団アラン・サムセ「バンテージ」上演
在日朝鮮人の劇団アラン・サムセによる演劇「バンテージ」(金元培作・金正浩演出)が13日から3日間、東京・渋谷区の渋谷ジァンジァンで上演され、延べ450余人の在日同胞と日本人が観賞した。
主人公は、東日本新人王のボクサー、木村秀男(=李秀男、在日同胞3世)。やはりプロボクサーであった彼のアボジは、在日同胞の元ボクサー、呉との試合で受けたダメージによって死亡している。試合に勝ってもなぜか空しさと孤独感だけが募っていく日々の中、呉との出会いを通じ、朝鮮人としての劣等感を持ち、偽りの生活を過ごしていた自分自身を見つめ直す。
「バンテージ」は、旗揚げから10周年目を迎えた同劇団の2年振りの作品。今回初めて在日同胞を主人公に、身近な問題を取り上げた。「1人でも多くの、日本学校に通う同胞学生に見にきて欲しい」との思いから、台詞もこれまでの朝鮮語ではなく日本語にした。
脚本を担当し、呉役で出演した金元培さん(35)は「バンテージはグローブに隠されて表からは見えないが、しっかり巻いておかないと拳を守ることはできないし、良いパンチも打てない。それと同じように、日本社会で生きる在日同胞にとって大切なのは、朝鮮人として生きる『心のバンテージ』をしっかりと巻いて地に足をつけて歩いて行くことだ」と語る。