自主路線を歩む―共和国の経済戦略/(中)世界経済「一体化」排撃
米国型市場経済押しつけに反対
各国で強まるIMF批判
昨年アジアで始まった通貨・金融危機はロシアへと飛び火し、ラテンアメリカに波及する勢いだ。そうなれば好調な米国経済もどうなるかわからない。とくにロシアは債務不履行(デフォルト)の危機に直面しており、経済改革が行き詰まれば世界恐慌も引き起こしかねない。
今回ロシアに危機をもたらした大きな要因は、国際通貨基金(IMF)が急激な市場経済導入を図ったためだ。ロシアでは今、IMF路線からの決別を訴える声が沸き出ている。「IMFの救済策、処方箋によって、アジア各国の状況が悪化した」と見るマレーシアのマハティール首相も、自国通貨を守るために固定相場制を断行した。
昨年からIMF支援を受けている南朝鮮の経済状況は、9月現在で失業率7.3%、失業者数157万2000人に達するなど、支援前より悪化している。
金広斗・西江大経商学部長は「IMFは、支援を受ける国の固有事情を考えず、無条件に原則に従って対処してきた。IMFは、どの国も米国のように市場原理が機能していると考えているようだが、実際にはそんな国は珍しい」(日本経済新聞10月5日付)と語った。
1944年のブレトン・ウッズ協定に基づき、世界経済の拡大を通貨・金融面で支えるものとして、米国の強いイニシアチブに基づきIMFと世界銀行が設立され、米ドルを基軸通貨とする体制が形成された。
米国は今も金融・貿易の自由化を唱え、「グローバリズム(一体化)」の名のもとに世界中で米国型市場経済を押しつけようとしている。自由化を求める米国の金融多国籍企業の先兵がIMFだ。
「金融多国籍企業は貸付、投機によって世界の金融資本を米国に吸収する戦略を持って動いており、彼らの最大のターゲットは日本の金融資本だ」と埼玉大学の鎌倉孝夫教授は指摘する。こうした動きがアジア金融危機を生み出したと言える。
シュミット元西独首相は、「アメリカは投機的な肉食獣的資本主義の発祥地」(「世界」12月号)と米国とそれに追随するIMFを批判している。
資本主義受け入れぬ
金正日総書記は昨年6月19日に発表した論文「革命と建設で主体性と民族性を固守するために」の中ですでに、「帝国主義者らが世界の『一体化』の流れを作り出したのは、全世界を西側式『自由世界』に作り上げ、全民族を自分たちに隷属させて同化させることに目的がある」と厳しく批判していた。
9月17日発表の労働新聞・「勤労者」の共同論説は第3章で世界経済「一体化」の本質と不当性について論評。「帝国主義の世界経済『一体化』策動の本質は、すべての国の経済を『西側化』『米国化』して世界経済をまるごと自らの支配下に置くことにある」と指摘した。
アジア金融危機については、「米国は昨年、金融投機の方法で東南アジア諸国の金融界を混乱に陥れ、その機会に莫大な利得を得た。『救済金』を与える代価として経済成長速度の制限、輸入規制緩和、市場開放などを強要し、自らの要求どおりに経済構造を改編させた」と解説している。
そして共同論説は、いわゆる「改革」「開放」は受け入れられないとの立場を再び明らかにした。
今年6月、米外交関係協議会が「米国の朝鮮半島戦略に関する12の勧告案」を発表したが、その第5番目には米国が共和国で市場化を促進し、共和国の政策を変化へと誘因する一連の初期の段階措置を履行することが明記されている。これを見ても、米国が共和国を「改革」「開放」へと誘導しようとしていることがわかる。
共和国は何故「開放」を拒否するのか。
共和国経済が専門の朝鮮大学校の姜日天氏によると、共和国は門戸を閉鎖した覚えはない。「むしろ長期にわたって経済封鎖という形で閉鎖されてきたのは共和国の方だ。したがってまず解決されるべきは共和国にたいする制裁問題だ」と姜氏は指摘する。
第2点として姜氏は、「開放」「改革」がワンセットになって共和国を体制移行=資本主義へと導こうとしていることをあげる。
「西側が 『改革』 『開放』 を促すのは、共和国に資本主義への復帰を強要するため」(共同論説)であり、社会主義体制を今後も固守していく共和国が到底受け入れられるものではない。
共同論説は「国によって歴史も環境も異なり、生産力の発展水準も異なる。いかなる国も実情に沿った自己式の処方で経済を発展させなければならない」と述べた。共和国における「自己式の処方」が自立的民族経済路線であることは言うまでもない。(聖)