sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

視点


 日本の情報収集衛星導入の危険性と関連して埼玉大学の鎌倉孝夫教授が最近、都内の講演会で興味深い話をしていた。鎌倉教授は、日本政府が情報収集衛星とは名ばかりの偵察衛星導入と戦域ミサイル防衛(TMD)構想への研究参加を決めた背景には、今の不況を軍拡で乗り切ろうとする底意があると語る。

 昨年来のアジアの通貨・金融危機は収まるどころか深刻さを増しており、南朝鮮では9月末現在の失業率が7.3%に達している。国際通貨基金(IMF)や当局の無策に抗議する民衆運動は南朝鮮、インドネシアなどアジア各地に広がっている。多数の企業をアジアに進出させている日本の経済界にとって、この危機は人ごとではない。日本国内の不況も深刻だ。

 そうした中で、1929年の世界大恐慌が第2次世界大戦を引き起こす大きな要因となったように、軍拡で不況からの脱却を図ろうとする危険な臭いが感じられる、と鎌倉教授は警告する。

 その口実にされたのが共和国の人工衛星問題だ。「衛星だろうとミサイルだろうと関係ない」と言い張る日本政府の見解は、当初から共和国の衛星問題を軍拡に利用しようとの企図があったことを示す。

 総開発費1500億円と見込まれる情報収集衛星の導入や、絶対に成功しないと言われるTMDに10億円(来年度予算)もつぎ込むのは、周辺諸国を気にしながら進めてきた軍事大国化政策を、今後は公然と行うことを宣言したものと言える。(聖)