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視点


 日本政府は、宇宙から特定の地域を繰り返し観測・監視できる情報収集衛星の導入を決めた。防衛庁、外務省を中心に10数年来検討されてきたが、共和国の人工衛星打ち上げを口実に一気に保有へと加速した。「いかにも思慮の足りない行為」(朝日新聞7日付)だ。

 打ち上げが予定されるのは写真で判読する光学衛星2基と昼夜全天候型のレーダー衛星2基。これを組み合わせることで常時監視が可能だ。情報衛星と名前を変えてはいるが、偵察衛星であることは明らかだ。

 1970年の初の人工衛星打ち上げ成功以来、日本は数々の実用衛星を打ち上げてきたが、偵察衛星導入については、宇宙開発を「平和目的に限る」とした69年の国会決議に反するとして長らくタブー視されてきた。だが独自の偵察衛星保有願望があったのは事実。85年2月、中曽根首相(当時)が初めて偵察衛星保有の可能性に言及、「利用が一般化している衛星については、自衛隊の利用が認められる」との政府見解が同時に打ち出された。

 だが内外からは「宇宙の平和利用の大原則が崩れた」(軍事評論家の藤井治夫氏)などの声が上がっている。偵察衛星や各種センサーで敵ミサイルを察知、迎撃する戦域ミサイル防衛(TMD)構想とあいまって非常に危険な軍事的動きだ。

 「日常的に上空から『のぞかれる』」(毎日新聞7日付)立場になる朝鮮半島、中国をはじめアジア諸国が警戒心を強めるのは必至だ。(聖)