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厳しい時代乗り切るポイント/朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座から


 10月19〜20日に東京の朝鮮商工会館で行われた朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座(主催=商工連同胞飲食業者協議会)では、経営コンサルタントの清水均、力石寛夫の両氏が、経営戦略や接客サービスについて講演し、好評を博した。清水氏は日本の大手外食チェーンのほとんどが加盟する日本フードサービス協会の協力アドバイザー。力石氏も帝国ホテルや日本ケンタッキーフライドチキンなど多数の企業の指導を受け持つ。両氏の講演をもとに、厳しい時代を乗り切る経営のポイントを項目別にまとめた。(文責編集部)

 

メニュー開発

「商品―客」の関係づくり

 商品開発や価格設定は、自店のコンセプト、すなわち、自分の店はどういう商品をどういう形で顧客に提供していくかという概念に基づいて行う。

 まずはこのコンセプトを定めなければいけないのだが、「商品・サービスと消費者との新しくユニークな良い関係」を作り出す方向で考えて欲しい。

 「ドゥプラ」「アソート」と呼ばれる方法は、こうした発想から生まれたものだ。これらは、決まった価格内で、複数のメニューから客が自ら料理の組み合わせを選んで注文する方式のこと。これだと値段の心配をせず納得して食事を楽しめる。

消費者感覚にズレ

 消費者ニーズは常に変動している。最近も不景気とあいまって、顧客が適正と感じる価格帯にズレが生じている。例えば、ランチでは950円の商品が主力だった店で、売り上げに占めるこの商品の割合が下がり、逆に680円の商品が伸びている。

 こうした動きを見極め、自店のメニュー中「手頃な価格」として売っている商品群の値段の幅(プライスレンジ)を移すことが必要だ。宴会の場合なら、客単価が3500円だったなら3000円に、3000円だったなら2800円にという具合に、「裾野を落とす」感じが望ましい。

 

従業員教育

「人間教育」の観点から

 従業員に心のこもった本当のサービスを身に付けさせたい場合にも、まずはオーナーや店長が、形・動作としてのサービス(最低限のサービス)を徹底して教えることから始める。

 そうすれば、とりあえず短期間に戦力化できるし、従業員らは実際の仕事を通して学ぶ機会を得られる。ここでオーナー・店長は、従業員の仕事ぶりに評価を与えつつ、サービスとはどうあるべきかという方向付けを行っていく。

 従業員に心のこもったサービスを求める以上、オーナー・店長も単なる職務としてでなく「人を育てる」観点から誠実に取り組むように。

定着率にも影響

 訓練・教育の充実度は、従業員の定着率にも影響してくる。

 ある企業が、短期間でアルバイトを辞めた人を対象にアンケートしたところ、辞めた理由として最も多かったのは、「誰も何も教えてくれない」。実に7割を占めていた(次に多かったのは、「職場の人間関係」で2割)。働く意欲を持って来た人に仕事を教えなければ、離れて行くのは当然だ。

 面接の際には「相手は客の1人である」ことを忘れてはならない。断る際に不快感を与えると、そこから口コミで悪い評判が広がる。対応は誠実かつ慎重に。

 

サービス

心込め「顧客感動」誘え

 客は飲食店に対し、料理の味だけでなく、安らぎや感動など精神的な面も求めている。ガラス越しに厨房が見えるオープンキッチンのレストランのように、イベント性がある店が流行るのは、「楽しさ」や「興奮」へのニーズに応えているからだ。

 こうしたニーズに応えるには、注文に従って料理を出す「作業」をこなすだけではだめで、思いやりや心遣いが必要だ。時には客の期待をも超えたサービスで、感動させるくらいでなければならない。かつて使われていた「顧客満足」という言葉は、「顧客感動」にとって代わられた。これがあってこそ、常連が固定客になり、ファンに、サポーターになってくれる。

苦情には「3変手法」で

 苦情のうち、清潔性に対するものが一番こわい。不潔だと気付いても、客は不快感を表すことは少ないが、客足は確実に遠のく。手が空けば拭き取り、掃き取り、拾い取る習慣をつけること。掃除箇所のチェックリストを作り、決まった時に点検するのもいい。

 何らかの苦情が出て、客の怒りが収まらない場合は「3変手法」を用いる。従業員が謝ってだめなら上役が対応する「人変え」。それでもだめなら事務所などへ通す「場所変え」。そして後日、改めて謝りに行く「時変え」だ。

 

心得

挑戦する姿勢こそ

 オーナーや店長が、飲食業に携わる人間として、自分の仕事の社会的意義や使命、役割についてどう認識しているかが、店にそのまま反映される。サービスの質や味の質はすべて、人間の質によって決まるのだ。

 とくに経営者には、広い視野と世の中や業界の動きに対する敏感さや、実際に見て歩く行動力が求められる。

 常に危機感を持って勉強を続けることが必要だが、情報や知識を得ても、何もしなければ意味がない。

 とにかく挑戦し継続する姿勢こそは、いかなるノウハウにも勝るものだ。