東京・上野で朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座
1998年度「朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座」が19日から、東京・上野の朝鮮商工会館で始まり、日本各地の同胞業者ら70余人が参加した。商工連の同胞飲食業者協議会が昨年から開催しているもので、不況による売上不振や大手資本の進出から、「民族産業」と言われる焼肉業界を支えてきた中小の同胞業者を守ることが目的。内容は、日本の大企業の指導も行う経営コンサルタントの講義や繁盛店の見学などで、日程は第1回(10月19、20日)と第2回(11月17、18日)の計4日間。第1回講座の様子を紹介する。(賢)
「淘汰の時代」
「外食産業は、競争から試合の時代に移った」。初日、経営ノウハウについて講演した経営コンサルタントの清水均氏は、こう強調した。「経済が好調だった時なら、売り上げを競いながらもある程度共存できた。しかし、これからは競合店との厳しい勝負に勝った店だけが残る淘汰の時代だ」との説明に、受講生らは緊張感を持って聞き入る。
「消費者ニーズに合わせて商品の価格帯を移して」「商品の提供方法に新しさやユニークさを取り入れること」など、計4時間以上にわたる講義で、ひっきりなしに出てくる対応策を聞き漏らすまいと必死だ。
2日目は、力石寛夫氏が接客サービス法について講義。「大部分の店は、客の注文に応じて料理を出す『作業』をサービスと勘違いしている。これからは思いやりのないサービスは価値を認められない」などの指摘には、自店のことを思い浮かべているようだった。
迫られる選択
講座では初日、2日目ともに、講義終了後に都内繁盛店を見学した。
初日は、業界最大手で低価格が売りのチェーン店。食事をしながら価格設定、サービス、味などをチェックした後、再び朝鮮商工会館に戻って意見交換した。
2日目は、東京を中心にチェーン展開する「叙々苑」の東京工場と、東京オペラシティー店を訪れた。
工場では同社の朴泰道社長が「マル秘部分もすべて見せる」と約束していた通り、食材の貯蔵設備、同社独自のキムチの盛り付け方、特製ヤンニョムのレシピなどを惜しげもなく公開。受講生らはカメラやビデオにしっかり収めていた。
李康浩さん(45・岡山県)は、「地元でも大手低価格チェーンの出店が続き、値段と質のどちらで勝負して行くかなど経営戦略の選択を迫られている。参考にと思って参加したが、内容の濃さは期待以上」と話す。
視野広めてこそ
選択や変化を迫られて参加した受講生は李さんばかりではない。不況による売上不振も深刻だが、大手進出の脅威が大きいようだ。
初日の見学後、深夜に及んだ意見交換では、「立地の良さや価格の安さは、サービスや料理のマイナス点を相殺して余りある」「大資本は仕入れも研究体制も優位。味も改善されて行くはず」などの発言が相次いだ。皆、「淘汰の時代」を肌で感じているのだ。
だから、「何かすべき」とは思う。が、大手も交えた激戦を勝ち抜く戦略など容易には浮かばない。
それだけに、帝国ホテルなど一流企業も指導するコンサルタントや業界トップ企業の協力による講座には「非常に刺激的。経営についての観念がガラリと変わった」(李弘貴さん・27)との反響が大きい。
白吟姫さん(50・山形県)もここ数年、地元で日本人経営の店が勢いづくのを見ながら、経営を洗練したいと考えていた。
しかし、「物ごとを自分の枠にはめて考えていては、案など浮かばない。幅広い視野を持つ必要性を、講座を通じて痛感した」と話していた。