「心と心のふれあいとは」/第20回「少年の主張」大阪大会優秀賞作品 東大阪朝中3年 洪延枝さん
9月に行われた第20回「少年の主張」大阪大会(主催=大阪府、青少年育成大阪府民会議)で優秀賞に選ばれた東大阪朝鮮中級学校3年、洪延枝さんの作品「心と心のふれあいとは」の内容を紹介する。
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皆さんは、自分の気持ちを相手にはっきり伝えることができますか?
相手に自分の気持ちを伝えるということは、簡単なようで難しくて、言える時と言えない時、色々あると思いますが、相手に伝えるということは、すごく大切なことだと思います。
暑い夏も過ぎた頃、私が中学1年生だったある日の学校の帰り道のことです。私の前に1人のお婆さんが現れて、一生懸命何かを伝えようとしているのです。でも私は怖くなって、何も言えずにそのまま自転車で逃げてしまったのです。
それは、お婆さんが私に手話で話しかけてきたからです。私は手話なんてひとつもできません。だから、逃げることしか頭になかったのです。でも家に帰って何時間か過ぎた時、私は「なぜさっき何も言えずに逃げたんだろう? ノートがあるんだから書けばよかった」と、自分に腹が立ちました。
次の日、私は本屋に行きました。それは、昨日みたいなことが今度はいつどこで起きるか、その時は手話で答えられるようにと思ったからです。
私は手話の本を必死に探しました。本を一つ一つ指差しながら、夢中になって探しました。「あった!」。早く勉強したくて、ダッシュで家に帰りました。
その日から手話を勉強していくと、この13年間、一度も気づいたことのない、感じたことのないものを感じられるようになりました。
皆さん。両手を開いて、その両手を軽く握り合わせてください。どうですか? 温かみを感じませんか?これは「友達」という意味です。そして親友である時にはその両手をギュッと強く握り締めるのです。握り合ったその両手から、もっともっと温かみが感じられませんか! 手話って温かいハートのこもった言葉なのです。
皆さんはよく握手をすると思います。握手は、手を握り合う親しみを込めたあいさつです。手話だって、たとえ声を出せなくても手で人に伝える言葉の一つなのです。
私はあの時、お婆さんが一生懸命に手話で話そうとしたことを無視した自分がすごく恥ずかしいです。だから、手話を勉強しようと決心しました。それがお婆さんへのお返しだと思うからです。でもそれだけではありません。もっとたくさんの障害を持つ人たちの役に立てるよう、幅広い勉強をしていこうと思います。
手話であっても一生懸命話そうとしている人たちの心を、一生懸命生きようとしている人たちの心を、読み取り、分かり合える人間になりたいと思います。
皆さん。もう一度、手と手を握り合ってみてください。温かい何かを感じませんか!