開発進む羅津―先鋒経済貿易地帯/朝・日輸出入商社の朴應星社長に聞く
インフラ整備で大きな進展/ビジネススクールも開校
共和国・中国・ロシアにまたがる豆満江河口デルタ地帯開発計画の一環として国連開発計画(UNDP)が推進している、共和国の羅津―先鋒経済貿易地帯で去る9月24〜26日、「羅津―先鋒投資ディスカッション」が催された。2年ぶりに現地を訪問した朝・日輸出入商社の朴應星社長に、今回のディスカッションと地帯開発の現状について聞いた。
相談会に200人参加
初日には、地帯開発に関する共和国側の概括説明と外国企業代表のスピーチがあった。残る2日間は、外国投資家や海外同胞商工人との個別面談と現地の視察に当てられた。日、米、中、UNDP関係者など海外からの参加者が約百人で、国内の参加者を合わせ200人ほどが集まった。
羅津―先鋒地帯の開発はなかなか思うように進んでいないのが実情だ。しかし、2年前に比べると、インフラ整備をはじめ様々な分野で重要な変化が見て取れた。インフラ整備ではとくに通信分野や交通アクセスの面で進展が見られた。
タイのロックスレー社が手掛ける通信インフラ整備は第1段階が終わり、現在は第2段階に進んでいる。通信分野はインフラの中でも重要な位置を占める。
羅津と中国の延吉をヘリコプターで結ぶ計画では、ヘリポートが完工し、事務所など関連施設も完成した。英国の新東北亜投資会社との合弁で始まり、今年中に新たな契約によりヘリコプターが2台納入されるという。この分野で成功すれば、東北アジア地域の輸送システムの発展に大きな前進となるだろう。
中国・延吉の現通海運集団公司が手掛けているコンテナ運航も着実に進展している。将来的には、現在の羅津〜南朝鮮・釜山間航路が、日本(大阪)まで延長される予定で、現通側も非常に意欲的だ。
香港のタイソン社との合弁による、元汀―羅津間の道路整備プロジェクトも、路盤整備が進んでいた。道路や列車などの交通網が整備されれば、地帯への投資はもとより、より多くの観光客も見込めるだろう。
観光事業にも力
今年3月にオープンした羅津市場はとても活発な雰囲気だった。生活必需品や野菜、鶏卵など品物は豊富、値段も格安だ。ウォンはもちろん、ドルや中国元も使われていた。夜も営業しているため、活気が途絶えることはなく、人々もみな意欲的に働いていた。中国朝鮮族との交流が盛んなようだった。
観光事業にも力を入れているが、主な観光客は中国人で、年間平均6〜7000人に上っている。
地帯の視察では市場や埠頭、ヘリポート、水産加工工場、海岸、史跡地などを見たほか、市内をくまなく回った。ホテルはどこも設備が充実していた。昨年7月には、在日同胞との合弁による高級ロッジ風の琵琶観光宿舎が完成しており、香港のエンペラーグループによる五ツ星ホテル建設も着々と進行中だ。
今回のディスカッションの日程と並行して、24日にはUNDPの協力による羅津企業大学校(ビジネススクール)の開校式も行われた。
オーストラリア、ベトナム、香港、シンガポールなどからUNDPによって選ばれた講師陣が30人ほど集まっていた。運営や教育については、UNDPが積極的にフォローする意思を示したが、同時に「朝・日輸出入商社からも資本主義の経営方式をはじめ、いろいろなノウハウを教えてもらえないだろうか」と、協力を依頼された。カリキュラムを組むうえで必要な資料の提供も要請された。
同胞商工人が投資を
現在、羅津―先鋒地帯で進んでいる投資案件のうち16件が、在日同胞商工人の投資によるものだ。ウニなど水産物の加工・輸入など順調なものもあるが、道路や上下水道などの整備が不完全なため、まだまだであるというのが実情だ。
朝鮮対外経済協力推進委員会からは在日同胞商工人に対し、稼働休止中の工場の再稼働への手助けや、水産加工工場をはじめいくつかのモデル工場を作ってほしいとの要請があった。外資導入による地帯開発促進のためにも、在日同胞商工人の積極的な投資が求められている。
開発を進めるうえで困難は多いが、これからも積極的に開発を進めていくと、羅津―先鋒地帯の関係者たちの意欲は高かった。