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埼玉・朝霞4中が在日朝鮮人問題で劇/「21世紀への伝言―国境・民族を越えて」


差別意識なくしたい/真の交流は認め合うことから

 埼玉県の朝霞市立朝霞第4中学校で9月22日に行われた文化祭のオープニングセレモニーで、生徒会を中心にした同校生徒たちによる「21世紀への伝言―国境・民族を越えて」と題した劇が上演された。関東大震災時の朝鮮人虐殺と4年前に起きた「チマ・チョゴリ事件」をモチーフに、在日朝鮮人の過去と現在に焦点を当て、日本社会に今も残る差別意識をなくしていこうと訴えたものだ。「真の交流はお互いをまず認め合うことから始まる」がテーマになっている。

 

3年間の集大成

 「最近、教育の場で『国際理解教育』が奨励されているが、多くは欧米に偏った『国際化』になっていないだろうか。隣国をはじめとしたアジア諸国にもっと目を向けると共に、日本に暮らす外国人、とくに最も身近な存在である在日朝鮮人の問題を認識しなくては、子供たちの世界観は偏ってしまう」

 シナリオを書いた社会科担当の中條克俊教諭はこう語る。中條教諭は歴史、地理、公民など社会科のすべての科目で朝鮮と在日朝鮮人の問題を重視した授業を行ってきた。

 今回、文化祭のオープニングセレモニーに在日朝鮮人問題を正面から扱う劇を選んだのも、生徒会の中心である今の3年生がこの3年間に学んだことを全校生にアピールしようとの思いからだ。

 生徒会の里千春会長(3年)も「この劇は、中学3年間にわたり中條先生と一緒に学んできたことの集大成。私たちが学び、感じてきた大切なことを、全校生に伝えたかった」と語る。

 今年の文化祭のテーマ「21世紀に向けて世界の文化に触れよう」にもぴったりだと、みなが賛成してくれた。

 夏休み中にシナリオは完成し、2学期から準備・練習に入った。

 この間、総聯埼玉県本部の安重根・宣伝部長兼教育部長やプロの劇団の人を招いて話を聞いたり、朝鮮語の台詞や演技の指導もしてもらった。

 こうした努力のかいあって劇は大成功だった。劇を見た根里亜紀子さん(3年)は、「劇でも言っていたように、日本と朝鮮との過去を知っていれば、チマ・チョゴリ事件など絶対に起きないと思う」と感想を話した。

 

積み重ねが大切

 「差別をなくそう」と劇の準備に取り組む生徒らの思いをよそに、9月に入って騒がしくなった「ミサイル」騒動を背景にして劇の準備期間、再び朝鮮学校生徒への嫌がらせ事件が起きた。朝霞4中の生徒たちは4年前、「核疑惑」騒動を機に朝鮮学校生への暴行事件が相次いだ際には、埼玉朝鮮初中級学校を訪れ激励の旗を贈り、交流を深めたこともある。

 「(事件について)同じ日本人として恥ずかしい。在日朝鮮人がなぜここにいるのかを知っていれば、こんなことは起きないと思う。国が違っても同じ人間、同じこの日本に住んでいるのだから、お互い助け合って生きていくべきだ」という当時の生徒の感想が、今回の劇の台詞にもなっていたというのに、「4年前と何も変わっていないと実感した。事実、子供たちのショックは大きかったようだ」(中條教諭)。

 しかし、生徒役で出演した片山彬君(3年)は次のように語っていた。

 「もしかしたら、僕らのやった劇の内容を分かろうとしないような人が、在日朝鮮人への無意味な暴行を繰り返すのかもしれない。でも今日は、多くの人が分かってくれたと思う。そしてそういう人が1人でもいるなら、この劇をやったかいがあったのではないだろうか。その人たちが友人や親にこのことを話したり、差別意識を持つ人に『やめろよ!』と言ったりできるようになると信じたい。おおげさかもしれないが、こういうことが、朝鮮人に対する差別意識をなくすことにつながっていくのだと思う」

 再び続発する事件が示しているように差別意識は簡単になくなるものではないが、「知ること、そして知らせること」――一つ一つの地道な積み重ねが大切なことを、生徒たちは強く感じたようだ。