ここが知りたいQ&A/京大大学院が初めて朝大生を受け入れたが
世論背景に独自の判断/文部省はなお「資格なし」
Q 京都大学の大学院が、国立では初めて朝鮮大学校の卒業生を受け入れたというが。
A 京大理学部の大学院にあたる理学研究科は、8月から9月にかけて行った修士課程入学試験で朝鮮大学校卒業者3人の受験を認め、うち1人が合格した。入学は来春になる。
国立の大学院が、各種学校扱いの朝大卒業生に門戸を開くのは初めてだ。日本の文部省が、各種学校扱いの朝大を卒業しただけでは大学院の受験・入学資格はないとしているのに対し、同研究科は独自の立場からこれを認めた。同研究科では3人の出願を受け、募集要項で入学資格について定めた「本研究科において、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」との項を適用し、受験を認めた。
文部省は同研究科の決定に対し、「資格はない」とする従来の見解を改めて示した。
しかし同研究科も、「出願者に大学卒業と同等の学力があればよく、出身校を問題にするのはおかしい」(尾池和夫・理学研究科長)と主張し、方針は変えない姿勢だ。
Q 他の大学や大学院の対応は。
A 現在、過半数の公私立大学が京大大学院と同様の立場から、朝鮮学校やインターナショナルスクールなど各種学校扱いの外国人学校生の受験を認めている。大学院でも同様で、東京都立大、早大など公・私立の大学院への入学実績が多数ある。
しかし、国立大が朝鮮学校生の受験を正式に認めたことはなかった。また朝大から今春、複数の国立大学院に出願したところ京大以外は門前払いされた。
Q 京大大学院が、今回の決定を行うに至った背景は。
A 本来、大学には自治権が認められており、受験資格も教授会などで独自に認めることはできる。しかし、文部省から「指導」などの形で圧力が加えられ、必ずしも自由な裁量を下すことはできないようだ。
しかしこの問題では、総聯を中心とする在日同胞と、国立大教員ら広範な日本人が国立大の門戸開放を求めて運動を展開している。今年に入ってからは、こうした声が反映され、日本弁護士連合会や国連の子どもの権利委員会が日本政府に対し、是正勧告を行った。
京大大学院の決定は世論の盛り上がりを背景に、独自の立場を貫いてきた多くの公・私立大や大学院の姿勢が、ようやく国立大にも及んだものと言える。
Q 今後、国立大や大学院が門戸を開放していく展望は。
A 公私立大や京大大学院のケースが示すように、現行でも大学が独自に門戸を開く余地はある。まずは国立大と大学院が、京大大学院の例にならい、独自の立場から受験を認めていくことが望まれる。
しかし、文部省が「資格なし」との立場を取り続ける限りは、人権侵害としての問題の本質は残る。
日弁連や国連の子どもの権利委員会が、現状の是正を勧告した相手は日本政府だ。とくに日弁連は、最終的には立法措置をもって、資格・助成面での日本学校と外国人学校との格差を解消すべきだと指摘している。
今後も文部省に対し、民族教育の権利全般を認めるよう政策の根本的な転換を求めていくことが必要だ。