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南朝鮮の「改定国籍法」Q&A


 父母両系血統主義を改定の柱とした南朝鮮の「改定国籍法」(以下『改定法』)が6月14日から施行されて3ヵ月あまりが過ぎた。日本政府が共和国国籍法を一切無視し、外国人登録上の国籍欄の記載が「朝鮮」であっても「韓国」であってもすべて南朝鮮「国籍法」を適用する差別政策に固執している現状のもとで(そのため当欄では便宜上、とくに明記していない場合、『韓国籍』の人まで含めて朝鮮人、朝鮮籍と表現している)、すべての在日同胞は南朝鮮「国籍法」改定に無関心ではいられない。1問1答形式で、改めて疑問に答えてみる(なお、当欄で言う『朝鮮籍』、『韓国籍』は、あくまでも外国人登録証に記されている国籍のこと。本紙7月14〜24日の間に連載された『南朝鮮国籍法改定と在日同胞への影響』も参考に)。

 

なぜ「朝鮮籍」にも影響?

日本当局の不当な扱いのため

 Q 南朝鮮「国籍法」の改定が「韓国籍者」だけでなく、朝鮮籍者にも影響を与えるのはなぜか?

 A 日本で外国人の国籍をどう決めるかは、本国の国籍法によって判断する。つまり、朝鮮人の場合は当然、朝鮮の国籍法で判断しなくてはならない。

 日本の役所は通常、外国人の国籍を判断する場合、その国の政府が発給した旅券(パスポート)で判断している。在日朝鮮人のように旅券を持っていない外国人については、外国人登録上の国籍で判断することになる。

 しかし日本政府は現在まで、外登上の国籍欄が「韓国」の同胞だけでなく朝鮮の同胞まですべて「韓国国籍」扱いし、南朝鮮「国籍法」を適用している。そこで、日本においては、改定された南朝鮮「国籍法」がすべての在日同胞に適用されることになる。

 だからといって、今回の改定が全在日同胞の国籍にすぐになんらかの影響を与える訳があるのではない。当面して直接影響があると思われるのは、@国際結婚をした夫婦に生まれた子A一方の外登上の国籍記載が朝鮮で、もう一方が「韓国」である夫婦に生まれた子――だと言える。

 

父母両系血統主義とは?

子に母の国籍付与可能に

 Q 父系血統主義が父母両系血統主義に変わったとは、一体どういう意味か?

 A 自国の公民から生まれた子に、その父母と同じ国籍を付与することを血統主義と言う。

 そのうち、父親の国籍だけを基準にして子に国籍を付与することを父系血統主義と言い、父親だけでなく母親の国籍も基準とすることを父母両系血統主義だ。

 南朝鮮「国籍法」はこれまで父系血統主義を採用してきたため、父親が朝鮮人、母親が外国人である場合には子供は朝鮮籍となったが、父親が外国人で母親が朝鮮人の場合は子供は朝鮮籍を取得することができなかった。

 父親の国籍だけを基準にするのは女性差別的だとして、70年代以降、世界的に見てほとんどの国が父母両系血統主義を採用するようになった(ちなみに共和国は63年から、日本は84年から父母両系血統主義を採用)。

 南朝鮮もこの世界的趨勢に逆らえず、今回、父母両系血統主義に移行することになったのだ。

 

「朝鮮籍」と「韓国籍」の間の子は?

父母の意向に沿って国籍記載

 Q 一方の外登上の国籍が朝鮮で、もう一方が「韓国」の夫婦の間に生まれた子供の国籍欄の記載はどうなるのか?

 A 旧「国籍法」のもとでは父系血統主義に従い、外登上の国籍が、父親が朝鮮、母親が「韓国」であれば、その子供は朝鮮に、父親が「韓国」、母親が朝鮮であれば、その子供は「韓国」に表記された。

 「改定法」は父母両系血統主義を採用したため、これをそのまま当てはめると、子供の外登上の国籍表記はその父母両方の国籍(朝鮮、『韓国』)を併記しなくてはならないが、これは現実的ではない。

 そこで日本当局は、こうした場合の子供の外登上の表記は「父母の意向に沿って」記載するとした。つまり、父母が子供の外国人登録を申請する時に朝鮮と書けば朝鮮に、「韓国」と書けば「韓国」に表記されることになる。

 

外国人配偶者、「朝鮮籍」になれる?

事実上不可能に

 Q 朝鮮人が国際結婚をした場合、その配偶者の国籍を朝鮮に変えることはできるのか?

 A 「改定法」施行によってできなくなった。

 旧「国籍法」の下では、朝鮮人男性が外国人女性と結婚すると、その女性が6ヵ月以内に外国籍を離脱することを要件に、朝鮮籍に変えることができるようになっていた。

 しかし「改定法」は、南朝鮮内での偽装結婚による国籍取得を防止するという理由でこの制度を廃止した。現在、朝鮮人と結婚した外国人が朝鮮籍を取得するためには、南朝鮮に1〜2年居住した後、法務部長官に「帰化」申請をしなくてはいけない。しかし、これは在日同胞にとってはあまりに非現実で、事実上不可能に近い要件だ。

 このように、在日同胞の間で国際結婚が増えている中、日本人配偶者が朝鮮人配偶者の国籍を取得する道を事実上閉ざしたところに、在日同胞から見た「改定法」の問題点の一つがある。

 

国際結婚の子、「朝鮮籍」になれる?

可能、ただし22歳までに選択必要

 Q 朝鮮人が国際結婚した場合、子供は朝鮮籍を取得できるか?

 A できる。

 従来は父系血統主義だったため、父親が朝鮮人で母親が外国人の場合は朝鮮籍を取得できたが、父親が外国人、母親が朝鮮人の場合にはできなかった。しかし、「改定法」では父母両系血統主義になったため、父親が外国人で母親が朝鮮人の場合の子供も朝鮮籍取得が可能になった。

 ただし、注意しなくてはならないのは、朝鮮人が国際結婚した場合の子供は朝鮮籍単独ではなく、外国人親の国籍も共に取得することになり、2重国籍者となる。例えば、父親が日本国籍、母親が朝鮮籍の場合、その子供は日本と朝鮮の両国籍を持つことになり、日本の役所では、その子供は日本人として扱われる。さらに満22歳までに朝鮮籍を選択しないと、朝鮮籍は自然に消滅してしまう。

 「改定法」によると、2重国籍者が朝鮮籍を選択するためには @日本国籍離脱手続き A法務部長官への国籍選択申告――の二つの手続きが必要だが、一部の「韓国籍」(『韓国国民登録』をしていなかったり、南朝鮮旅券の発給を受けていない者)と朝鮮籍の在日同胞の場合は、従来どおり父母の外国人登録済証明書などの国籍証明書類を提出すれば、Aをしなくても@の日本国籍離脱だけで朝鮮籍を選択できる。

 

改定前の子にも適用?

一部に経過措置あり

 Q 「改定法」施行以前に朝鮮人女性と外国人男性が結婚して生まれた子供の場合もも、これから朝鮮籍を取得できるようになったと聞いたが。

 A 一部の人は取得できる。

 「改定法」にはいくつかの経過措置規定がついているが、その中に父母両系血統主義の採用にともない、「改定法」施行以前に朝鮮人の母親から生まれた子供にも母親の国籍を付与するための規定がある。

 具体的には、88年6月14日から98年6月13日までの間に生まれた子供で、父親が外国人で母親が朝鮮人の場合、2001年6月14日までに必要な手続きを行えば、朝鮮籍を取得できるようになった。

 つまり、88年6月14日より前に生まれた子供は対象とならない。

 

認知による国籍取得は?

「6ヵ月条項」なくし簡単に

 Q 「改定法」施行によって、認知による国籍取得が以前より簡単になったと聞いたが?

 A 結婚届を出していない婚姻外の「夫婦」、いわゆる内縁関係で生まれた子供を自分の子だと認める場合の法的手続きのことを認知という。

 旧「国籍法」では、結婚届を出していない外国人の母親から生まれた子供でも、朝鮮人の父親が認知すれば朝鮮籍を付与 できるようになっていた。

 ただしそのためには、認知後6ヵ月以内にその子が外国籍(母親の国籍)離脱手続きをしなければならなかった。

 「改定法」はこの6ヵ月条項をなくし、子供が未成年の場合、父親もしくは母親の認知があれば、朝鮮籍を付与することにした。

 

在日同胞棄民政策の反映?

国際結婚者の国籍選択困難に

 Q 「改定法」には、南朝鮮当局の在日同胞に対する棄民政策が反映されていると聞いたが。

 A 日本人との国際結婚が7割を占め、その夫婦から生まれた子供たちの大多数が日本国籍者となっている在日同胞の深刻な現状を考慮していないからだ。

 国籍法とは、自国の公民としての資格=国籍をより多くの人たちに付与するのか、もしくは限られた範囲の人たちにだけ付与するのか、というその国の公民政策が直接的に反映される法律だと言える。したがって、在日同胞を自国の公民としてみなす政策に立つならば、在日同胞が自国の国籍を維持し、取得しやすい立法とすべきだ。

 しかし「改定法」は、国際結婚をした在日同胞の子供たちが民族の国籍を選択することを困難にした。(例えば2重国籍者に対する厳しい国籍選択要件)だから民団系の同胞の間からも、「改定法」は在日同胞を見捨てる棄民政策の反映だと批判の声が出ているのだ。