朝米関係の現状/食糧支援に前向きの米
共和国資産凍結解除へ
議会も対北接近/独自の代表団を派遣
15日、カール・レビン米上院議員(民主党)一行が訪朝したが、ここには平壌に設置される連絡事務所の初代所長に内定しているエバンス・リビア氏が同行しており、「朝米連絡事務所設置問題で協議」(朝日新聞16日付)した模様だ。朝米は年始から関係改善に向け進捗している。現状をまとめた。(基)
副大統領の従兄も訪朝
まず人道問題について見る。
米国は共和国への食糧支援問題で、昨年10月末に米政府初の調査団訪朝に続き、12月初には米議会傘下の安全保障協議会財団(NSCF)が報告書作成のために独自の訪朝代表団を派遣した。代表団にはゴア副大統領の従兄で弁護士のジェームス・ゴア氏も含まれていた。
米国の対北食糧支援はこれまで、国連機関を通じて行われていたが、米国が政府代表団を送ったのは、独自の判断に基づく対応を可能にすることを狙ったものと言える。
それはその後1ヵ月たらずで議会傘下の財団が訪朝したことにも表れている。
これまで米議員による個人資格の訪朝は数多くあったが、議会傘下の機関が公式的性格を持つ代表団を送ったのは初めてのこと。共和党が大多数を占める米議会では、対北経済規制措置解除に難色を示すなど朝米の急速な関係改善を避けてきた。それだけに、人道問題をきっかけに議会の対北理解を深めたいというのがクリントン政権の思惑だととれる。
こう見ると、これらの代表団訪朝は、米政府と議会が共に、対北関係改善・接近を進めていることを示すものと言えよう。世界食糧計画(WFP)は6日、共和国への過去最大の食糧支援(3億7820万ドル分)アピールを発表したが、米国務省のルービン報道官は、「米国がWFPの要請にこたえて昨年は総計で約5000万ドルを援助した」と指摘し、今回も前向きに対応することを示唆した。共和国水害被害対策委員会は12日、WFPのアピールに謝意を表している。
異例のワシントン会議
昨年10月8日の金正日朝鮮労働党総書記推戴直後、米国務省は歓迎のコメントを発表し、その目的は「今回の出来事を機に米朝関係で新たな希望を示そうとすることにあった」(マーク・ミントン同省朝鮮課長)と指摘した。クリントン米大統領は11月21日の声明の最後で、「将来の平和を構築するために、米国は全面的にコリアン・ピープル支援のパートナーになるつもりだ」と述べた。
「米大統領声明は、冷戦による南北対立の時代の終了を北朝鮮に告げる、米国のシグナルである。米国は、もはや北朝鮮を敵対する相手とは考えず、平和を創造するパートナーとして対応するとの立場を表明した」(毎日新聞昨年11月24日付)ことになろう。
その一方で同月26日、共和国外交部の金桂寛副部長一行が米政府の招待でワシントンにある米国務省を初めて訪れ、カートマン次官補代理と会談した。これは、両国関係の進展ぶりを示唆するものだった。
米国はこれまで、駐国連共和国外交官や訪米した共和国高官がニューヨークから25マイル(約40キロメートル)以上離れた所を訪れる時は特別な許可を受けるよう規定してきた。それに沿って共和国人士らは、双方首都に設置される連絡事務所の場所選択や学術セミナー参加などの目的でワシントンを訪問してきた。が、米国が国交もない共和国の高官を、首都ワシントンにある米国務省に招いてわざわざ会談を行ったのは初めてである。
また、「米国が敵性国として分類した国家の代表と国務省で会談をした前例も探しにくい」(東亜日報昨年11月28日付)。これまで、米国で開かれた朝米会談の場所はニューヨーク市内がほとんどだった。
会談には朝米双方の外務担当官にホワイトハウスのスタッフも加わり、米兵遺骨発掘共同作業への協力、連絡事務所の設置、ミサイル協議の再開、米国の対北「テロ国家指定」削除などの2国間問題を中心に話し合った。それに先立ち金副部長は、上院軍事委員会のレビン議員や下院外交委員会スタッフら上下両院議員らとも会談を行い意見を交わした。
その後、米国は12月に在米共和国資産の凍結解除措置に着手した。これは朝米基本合意文で米国が合意を履行していない対北経済規制緩和に向けた動きの一環である。また米議会傘下の財団が同月に訪朝したのも人道問題を通じた朝米接近を示すものだ。
一方共和国も昨年計3回行われた米兵遺骨発掘共同作業問題について同月、今年計5回共同作業を実施することで米国と合意した。
このような朝米の動きは、後退することなく今年も順調に前進することを意味している。カーター元米大統領の再訪朝、連絡事務所の開設などの動きがあれば、関係を大きく進展させる契機をもたらすことになろう。