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座談会―阪神・淡路大震災

総聯と同胞 被災地の3年(下)/頼れる組織であってこそ


生活密着のイメージ確立を/求められる「きめ細かい気配り」

 阪神・淡路大震災のダメージに不況が重なり、被災者の生活再建は今後も困難が続く。混迷を深める現状と、組織の課題について話し合った。

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――被災地の現状は

 趙富雄・兵庫生活相談センター所長(以下趙) 県内の仮設住宅の入居数は約2万5000世帯だ。神戸市内では1万7200世帯、3万人で、そのうち同胞は3000人だ。

 康義平・総聯西神戸支部委員長(以下康) 仮設は1人暮らしの比率が高く、とくに高齢者など生活力の弱い人が多い。長田区の同胞のうち、約500人が仮設にいると推測しているが、高齢の同胞を訪ねるとなかなか元の場所に帰れず心細い思いをしている。

 崔敏夫・総聯須磨垂水支部大池分会長(以下崔) ケミカルシューズの仕事をしていても、融資の返済が迫っているのに景気はどん底。皆、頭をかかえるばかりだ。再建した分会事務所が区画整理の対象になり、一度撤去せざるを得ない問題も出てきている。

 趙 被災地域の区画整理事業はすでに計画が決まっており、今年から大きく動く。例えば長田区では、3000戸が退去・移転の対象となっているが、神戸市に確認したところ、そのうち660戸が同胞宅だった。現在までに、神戸市全体では1000戸、尼崎市でも60戸の同胞が対象になることが分かっている。

 問題は移転先と補償額が、同胞らの要求に見合ったものになるかどうかだ。行政は震災後、地価の下落や財政難などを理由に、日本人、同胞を問わず補償金を出し渋っているのが現状だ。組織が同胞の手助けをすべきところだ。

 区画整理で移転したり、仮設住宅から帰って来て家を再建するにも、この不景気では資金づくりも難しい。融資斡旋の必要も提起されるだろう。今後も難題は尽きない。

 鄭光根・伊丹商工会会長(前伊丹初級新校舎建設委員長、以下鄭) 震災で財産を失ったうえに不況の追い討ちを受けたのでは、同胞は何をどう頑張れば良いかも分からないのではないか。組織にとっても、問題を一括して解決することなど不可能だろう。

――被災同胞は組織に、何を求めているか

 崔 不況は総聯にもいかんともし難いが、とりあえず目の前の生活問題は組織を中心に団結して乗り切って行きたい。そのために、運動の中にきめ細かい気配りが欲しい。

 例えば「被災中高年恒久住宅自立支援制度」というのがある。世帯主が45歳以上で、仮設から恒久住宅に移った場合、複数世帯なら月額2万円を2年間受給できる。所得が507万円以下など色々と条件はあるが、多くの同胞が対象になると思う。そういう情報を知らなかったり、なかなか区役所に足を運ぶ時間がつくれない時に、支部が「こういうものを知っていますか」「用紙は支部にもありますからどうぞ」と言ってくれれば皆、どれほど喜ぶか。

 趙 昨年5月のセンター開設以来、160件の相談を受けてきた。その経験から言うと、とくに組織に属さない同胞の多くは、総聯は政治団体で、生活問題とは無縁と誤解している。しかし誠意をもって悩みに耳を傾け、解決すると、彼らも組織に対する印象を変える。組織の必要性を、生活を通して感じるからだ。

 震災を機に表出した同胞らの生活問題を運動の中心に据え、組織のイメージから変える必要がある。

――当面の課題は

 崔 地域に同胞らが帰ってこれるよう、分会でも生活・権利問題を取り上げて行きたい。区画整理に引っ掛かる分会事務所も必ずまた建てる。

 鄭 民族教育の強化、とくに生徒数増が課題だ。民族教育が発展すれば組織の将来もひらける。

 趙 今年は朝鮮学校の助成金獲得と同時に、同胞の権利・生活問題では300件の解決が目標だ。そうすれば1000人くらいの同胞に影響を与えることができ、生活と密着した総聯のイメージも広がる。

 康 頼れる組織であってこそ同胞はついて来るし、同胞の支持があってこそ組織は力を発揮できる。3年間の教訓だ。生活問題への取り組みで同胞らの信頼に応え、運動の拠点たる支部の強化に努めたい。