作曲家尹伊桑氏生誕80周年記念コンサート/初期の作品日本で初演


 現代音楽の巨匠で世界的な作曲家、尹伊桑氏の生誕80周年を記念したコンサート「尹伊桑の世界」(企画=コリアアーツセンター)が17日夕、東京・文京区のシビックホールで開催され、著名な在日音楽家や日本人音楽家らが出演した。

 解説と司会は、指揮者の金洪才氏が担当。はじめに中央大学の伊藤成彦教授が「傷ついた龍」と題し、尹氏の哲学と芸術観について講演した。

 続いてコンサートが幕を上げ、尹氏が作曲したピアノ独奏「間奏曲『A』」(朴順愛)やアルト・フルートによる独奏「サロモ」(中川昌巳)などを、洗練された演奏で披露。初期の作品「ブランコ」(1947年)や「旅人」(48年)、「手紙」(41年)、「古風衣装」(48年)をソプラノ歌手の韓錦玉氏が、また「タルムリ(月暈の夜)」(48年)とシューベルト歌曲「夕映の中で」を評論家で歌手の鄭敬謨氏が、それぞれ独唱した。

 とりわけ、「尹伊桑初期歌曲集『タルムリ』他5曲」中、今回日本で初演された5曲の楽譜は、1950年の朝鮮戦争時に行方不明となり、90年に平壌で発見され尹伊桑音楽研究所で再版として発行されたもので、注目を集めた。