総聯中央委員会第17期第4回会議決定/民族性維持、緊急課題に
看過できぬ同化・「帰化」現象
高齢者、就職、結婚など 生活に密着した活動を
総聯が12日の中央委員会第17期第4回会議で決定した運動方針は、21世紀の在日朝鮮人運動の行方に大きく関わる重要なものだ。決定の柱は、主体的愛国力量の拡大に向けて @在日同胞社会で民族性を守っていく A生活・権利の擁護により力を入れる B組織を同胞の生活により密着した形に転換する、の3つ。いずれも、総聯が以前から取り組んできた問題だが、内容を詳しく見ると、より今日的な視点に立ったものであることが分かる。(賢)
「3ヵ月運動」の教訓
会議決定として採択された許宗萬責任副議長の報告「在日同胞社会で民族性を守り、生活と権利を擁護する運動を力強く繰り広げ、主体的な愛国力量をさらに拡大強化するために」は、今後の課題への言及に先立ち、5月から組織を挙げて取り組んだ「同胞訪問、奉仕、団結 3ヵ月運動」を総括。
運動の過程で、「同胞の中に入り、服務することが総聯本来の使命であり、同胞らもいつになく切実に、それを期待していることを現実の中で体得」し、同胞と接しなければ変化した現実に対応できないことを痛感した、と指摘している。
提起された今後の課題も、この経験を踏まえたものだ。
「参政権」運動に反対
在日同胞社会で民族性を守る問題は、総聯が結成以来、一貫して取組んできたものだ。そのことは、すでに半世紀を越えて体系的な民族教育を営んでいることからも明らかだ。
今回、この問題が改めてクローズアップされた背景には、在日同胞社会で世代が交替し、日本政府の同化政策や南朝鮮当局の棄民政策がある中で、日本人への同化・帰化が急速に進む深刻な現実がある。
報告では、在日朝鮮人運動の原点は、日本帝国主義による植民地統治時代から、今日に至る異国での曲折に満ちた生活で体得した、民族を離れては真の生きがい、幸福を手にできないという祖国観、民族観にあると指摘。それゆえ、この現状は絶対に看過できないとしている。
すなわち、民族性を守ることが在日同胞の運命開拓で、焦眉の問題になっているとの認識だ。
対策としては、教育や文化スポーツ活動を通しての民族性かん養とともに、「民族的自主権を放棄し」「同胞の運命を日本政治に任せようとする」民団の「参政権」運動に断固反対することを強調している。
情報誌、機関新設など
2つ目は在日同胞の生活・権利の擁護だが、今会議は生活問題への対応が前面に出されたことが特徴だ。 具体的な課題としては、高齢者問題、就職問題、結婚問題への取り組みと、総聯支部で生活相談を受ける態勢を体系的に整えることなどが挙げられている。
21世紀初頭に到来する超高齢社会への備えは、日本で最も急務となっている問題だ。在日同胞社会でも同様に高齢化が進んでいるが、日本政府の差別政策による無年金高齢者が多数いることや、独自の文化、習慣を持っていることなどから、いっそう複雑な事態も予想される。報告では独自の訪問介護、医療保健福祉施設の建設までを視野に入れ、対策を講じることを提起している。
就職問題も、若い世代の志向の多様化や、混迷を深める経済状況の中で再就職先を求める人の増加を予見すれば、すぐれて今日的な問題と言える。報告では情報誌の発刊、あっ旋機関の発足でこれに対処するとしている。
総聯は、結婚相談事業ではすでに、日本全国に相談ネットワークを整備してかなりの成果を上げてきたが、これらの問題でも役割を果たすことが期待される。
第1、第2の課題はいずれも、「3ヵ月運動」で把握した在日同胞社会の実態とニーズを、すかさず反映したものと言える。
そして3番目の課題としては、活動家が常に同胞の中に入る体系を整えることが再度強調された。
常に同胞社会の現状に目を向け、そこから今後の進むべき方向を探り出す運動の方式は、今会議の決定にすでに端的に表れているが、変化の激しい時代に対応していくには、その確立がいつになく求められている。
<資料>同胞青年の意識調査/教育で人生観の違い
今会議の決定では、民族性を守ることを在日同胞の運命開拓のために不可避な問題として位置付けているが、民族性の有無は、個々の在日同胞の朝鮮人としての人生観にも影響しているようだ。そのことは、民族教育を受けたか受けないかで、同胞青年の意識に大きな違いが出ていることからも分かる。
総聯傘下の在日本朝鮮社会科学者協会(社協)は96年に、主に民族学校に通っているか、通ったことがある朝青員と青商会会員の男女(15〜34歳)を対象に意識調査を実施、1028人から回答を得た。一方、民団傘下の「在日本大韓民国青年会」(韓国青年会)も93年に意識調査を行い、「韓国籍」を持つ18〜30歳の若者800人(約9割が民族学校に通った経験なし)から回答を得ている。
「帰化」「祖国統一」に関する設問での両者の結果を比べると、「社協調査」では朝鮮人として生きることに積極的な志向が表れているのに比べ、「韓国青年会調査」にはそれが稀薄なことが分かる。
帰化問題
「社協調査」 | % | 「韓国青年会調査」 | % |
ぜひ帰化したい | 0.6 | ぜひ帰化したいと思う | 12.0 |
できれば帰化したい | 1.8 | できれば帰化したいと思う | 15.0 |
どちらでもよい | 11.9 | どちらでもよい | 29.4 |
あまり帰化したいとは思わない | 17.2 | あまり帰化したいと思わない | 15.9 |
絶対帰化したいとは思わない | 67.8 | まったく帰化したいと思わない | 27.7 |
無回答 | 0.8 |
祖国統一について
「社協調査」 | % | 「韓国青年会調査」 | % |
−祖国統一に貢献しなければならない | −祖国が統一したほうがいいとは思うが、自分が積極的に何かをしようとは思わない | ||
そう思う | 53.6 | そう思う | 15.8 |
どちらかと言えばそう思う | 29.4 | どちらかといえばそう思う | 20.8 |
どちらとも言えない | 12.7 | どちらともいえない | 48.4 |
どちらかと言えばそう思わない | 2.0 | どちらかといえばそう思わない | 7.2 |
そう思わない | 0.9 | そう思わない | 7.8 |
無回答 | 1.4 |
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