「従軍慰安婦」問題/当時の日本法でも犯罪/大審院(現在の最高裁)が有罪判決
朝鮮人強制連行真相調査団、国連人権小委で報告
朝鮮人強制連行真相調査団は、スイスのジュネーブで8月4〜29日に開かれた第49回国連人権委員会差別防止少数者保護小委員会で、1937年に日本の大審院(現在の最高裁判所)が、中国・上海の海軍慰安所で「従軍慰安婦」として働かせる目的で、日本から女性をだまして連れていった日本人慰安所経営者らに対し、旧刑法226条の「国外移送、国外誘拐罪」を適用して有罪確定の判決を出していたことを報告。甘言、欺まんなどを含む強制的な「慰安婦」集めが、当時から日本の国内法でも犯罪だったことが明らかになった。日本政府に「慰安婦」が違法であるとの認識を迫る上で、有力な足掛かりができたと言える。
同調査団が大阪府立図書館の「大審院刑事判例集」で確認したところでは、この事件は上海で軍人相手に女性に売春させていた業者が、32年に「海軍指定慰安所」の名称のもとに営業拡張を計画。仲間と共謀して「女中か女給として雇うように欺まんし」、15人の日本人女性を長崎から上海へ送った、というもの。「慰安婦」連行では、朝鮮や中国でも同様のケースが数多くあった。
日本政府は、93年の「慰安婦」に関する調査結果の発表に際して出した内閣官房長官談話で、この問題に軍が関与し、「募集、移送、管理なども甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して」強制的に行われたことを認めている。しかし、その後もこれが違法、犯罪であるとの認識は示さず、被害者への賠償を民間基金にすりかえるなど、法的責任を回避してきた。
国連など国際社会ではすでに、「慰安婦」問題が国際法上違法であり、被害者個人への賠償が必要であるとの認識は動かし難いものになっている。
今回発掘された事実は、日本政府に態度の変化を迫る重要な資料となろう。
「法的責任を追及」新任の特別報告官
一方、同委員会では、委員会副代表のゲイ・マクドゥガル氏が「従軍慰安婦」および強制連行・労働問題を調査する特別報告官に任命された。
同氏は以前から「慰安婦」は国際法上違法との立場を取っており、今会議でも今後、「従軍慰安婦」被害者への国家賠償責任を論じる報告書の作成に向けて、日本政府の法的責任を全面的に調査・研究していくことを明らかにした。
同小委員会では93年に、これらの問題を調査する特別報告官にリンダ・チャベス氏を任命した。
同氏は昨年8月、第1次報告書を小委員会に提出し、日本政府の法的責任を指摘した。
マクドゥガル氏はこれを受けて、さらに全面的な調査・研究を重ね、来年、最終報告書を提出する。