視点/米空母の小樽入港騒ぎ


 「戦争になったらどうなるの」。北海道の小樽港に入港し6、7日の両日、一般公開された米空母インディペンデンス(満載排水量8万643トン)を見物した小学生が父親に問い掛けた質問だ。米空母が神奈川県の横須賀基地を事実上の母校として以来、初めての民間港寄港だ。2日間で30万人近い見物人が殺到、同市の人口約15万6000人の約2倍だ。地元では「カネが落ちるなら大歓迎」との声もあったというが、寄港の狙いがどこにあるのか見抜く必要があろう。

 空母は艦載機を使って敵陣を攻撃する、いわば「ヤリの穂先」だ。小樽港は朝鮮有事に米軍が使用する可能性のある民間港の1つに挙がっている。寄港は「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の地ならしだなどの抗議の声もあったが、「30万人見物人の騒ぎ」が圧倒、それでも子供は本能で戦争の危険性を感じたようだ。

 同空母の作戦を指揮する第5空母戦闘軍司令官チャールズ・ムーア少将は9日、朝日新聞のインタビューで「朝鮮半島の有事の際は、空母インディペンデンスとキティホークが部隊を乗せて一番最初に駆けつける使命を担っている」と語った。

 「この船が実際に戦闘に参加すると思うと怖いですね」と心配そうに語る会社員もいたというが、当然の懸念であろう。

 寄港は親善目的といわれたが、米軍はガイドライン見直し作業が本格化した昨年より、かなり以前から、軍艦や軍用機の有事利用を前提に、日本各地の民間港湾・空港で、水深や滑走路の舗装の厚さなどを調査してきたという。現代戦では前線も後方もない。「戦争になれば日本各地が巻き込まれる」。(喜)