高麗青磁への誘い十選 申載天/A青磁広口水注
高麗青磁の水注としては瓜、瓢、筍、瓶、筒、広口、球形、まれなものとしては亀形、鳥形など多くの種類がある。
この作品は大きな口から頸にかけて少し絞りがあって急に美しい流線をなして広い胴につながり、次第に細くなって底部は水注としての安定した形を保っている。そして緩やかに曲がった注口と大きく弧を描いた2重の把手がついている。
広口の水注または頭部が筒形になっている水注などは概して底部が大きくなりやすいが、この作品は上半部と下半部とがほどよい均衡を保っている。
総体にかかった青磁釉はむらなく澄み切った、少し冷たい感じのする淡灰青緑色に焼き上がり、釉面には粗いひび(氷裂・貫入)が入っている。
胴にかけて青磁釉は酸化焔が作用して茶褐色味を帯びているのが惜しまれるが、この作品をともに鑑賞した共和国の陶芸家、任士準先生は「炎のなせる神秘なわざで、夕焼けのように見える。昔の壺は味わいがある」と慰めてくれた。
文様のないだけに器形と釉色の美に主眼が置かれたのだろう。澄んだ青磁釉色の肌と洗練された端正な姿が組み合っていっそう静寂な美しさを醸し出している。
酒器ではなく寺院などで仏器として使われたものではないだろうかと思われる。(12世紀前半、高さ23、3p)