高麗青磁への誘い十選 申載天/@青磁蓮唐草文梅瓶
高麗陶器の美しさは何よりもその色にある。高麗の青磁は微量な鉄分を含む灰白色の胎土で器を形成し、素焼をした上に透明度の高い青磁釉(鉄分をわずかに含む)を施し、還元焔で焼成すると鉄分は灰青緑色の釉調に窯変し深遠な美しい釉面を呈するようになる。
この作品は、小さな口から短い頸、広く張った肩と胴、底部に向かう線が次第に細くなり、少し絞りがあって、高台ぎわで短く外反りした、俗に梅瓶といわれ、謹厳で優雅な器形を呈している。裾に一条の陰刻の帯線が回されている。
澄んだ淡灰青緑色の美しい釉薬がむらなく施され、釉下には器の全面にびっしりと蓮花と荷葉(蓮の葉)の唐草を浅い片切彫りで浮彫り風に表し、さらにごく細い毛彫りを加え花脈や葉脈まで繊細に刻文してあり、文様の彫線に釉薬が層になって重なり深い濃い色を見せている。
翡色青磁期の典型的な作品で、全羅南道康津か全羅北道扶安の官窯で作られたものだろう。
このような形の壺は主として酒を貯えるのに使用されたが、梅の枝を挿し観賞する風雅な習わしがあったので梅瓶と呼ぶようになったともいわれ、高麗青磁の代表的な器形である。端正にして安定した姿、美しい清澄な釉色の肌、細緻を極めた彫文様の精妙さなどによって、1日中ながめていても飽くことを感じさせない。(12世紀前半、高さ32.5p)
[著者紹介]
1960年春、16歳の時に大阪から単身で帰国。祖国の無料教育制度のもとで学び平壌医学大学を卒業。現在、平壌医学大学病院科長(医学博士、循環系の副教授)。共和国で初めて心臓カテーテル法を創始し心臓外科の発展に大きく貢献する。
81年〜92年まで文化遺物の収集にも励み、3回にわたり高麗の青磁107点、高麗の青銅器20点、李朝の白磁41点、計168点を朝鮮中央歴史博物館と朝鮮民俗博物館に寄贈する。金正日書記は今年4月、共和国の医学の発展と民族文化遺産の保存に尽くした功労を評価し共和国労働英雄称号を授与する。4月に朝鮮民俗博物館で寄贈品の展示会も行われた。