インタビュー/訪朝した深田肇社会党衆院議員に聞く


過去清算は政治道徳問題/日朝交渉、3党共同宣言を基礎に

 朝・日国交正常化のための予備会談が開かれ、関係改善への期待が高まっている中、社民党の深田肇・衆院議員が8月23日から26日まで朝鮮民主主義人民共和国を訪問した。訪朝の目的と金容淳書記をはじめ共和国関係者との会談内容などについて聞いた。(嶺、文責編集部)

 ―今回の訪朝の目的と、とくに感じたことは

 日朝関係が色々動きだした時期と私の訪朝の時期が重なったのは偶然だ。とは言え政治家の1人として、停滞している日朝関係の打破のために共和国の要人と意見交換を行うという目的もあった。出発前、幾人かの政治家、関係者と会った。日朝国交正常化交渉の予備会談直後だったので、私も携わり、日朝交渉のきっかけとなった1990年9月の3党共同宣言について改めて思い出された。宣言が採択される前年単独で訪朝し、ホ・ダム書記にお会いした時、90年代は日朝の新しい時代にしようと言われた。91年にホ・ダム書記は亡くなられたが、その思いは今も受け継がれていると確認できた。

 訪朝中、朝鮮労働党の金容淳書記をはじめ、朝・日友好親善協会の宋浩京会長、姜鐘勲・朝鮮アジア太平洋平和委員会課長らと会った。

 金容淳書記とは、4時間半も話をした。金正日書記が8月4日に発表した労作をもって、共和国の情勢について詳しく説明してくれた。現在、共和国は非常に苦しいが、金日成主席の3年の喪が明け、主席の遺訓貫徹にむけて書記の指導のもとに党と人民が団結しているので心配ない。共和国は3年続きの自然災害と旱ばつで打撃を受けており、党や政府の幹部らは休日を返上して農作業にも積極的に参加し、農民たちも努力しているので、今は見通しがたち始めたとのことだ。その中でとくに日本をはじめ世界の友人の援助、協力に心からの感謝を述べていた。

 ―日朝関係について話し合われたようだが

 日本については、敵視政策を捨てていないし、分断を手助けし、統一を妨害していると、非常に厳しかった。北京での日朝国交正常化のための予備会談では、共和国側は積極的に対応したにもかかわらず、日本側は消極的で無責任だったと言わざるをえないと言っていた。日朝の大使館で審議官級に格上げして行われたにもかかわらず本会談の話になると準備していないと言った。日本側は本会談の場所と日時についてはまったく白紙だった、と不満を抱いていた。

 ―日本人配偶者の故郷訪問問題については

 共和国側は、この問題は当方が人道主義の立場に立って考えるべき問題で、日本側に「人道主義」を指摘される筋合いの問題ではないと明確だ。共和国側は高齢になった彼女たちから親の墓参りや兄弟に会いたいという申し出があれば人道問題として扱い、日本側と話し合うとしている。

 今回聞いた話で印象的だったのは、共和国公民として暮らしてきた彼女たちは、孫にまで日本での出来事を話すのは辛いし、新たな人道問題も引き起こしかねないと述べた点だ。彼女たちにとって日本での差別や疎外感が記憶から消えていない。日朝関係の悪化に心を痛め、寂しく思っている。日朝が友好関係を築いて自由往来できるようになれば、このような問題も浮上しない。

 共和国側はこの問題を、援助や国交交渉再開の条件として扱うつもりはない。私との話の中で日本人配偶者の問題についてはこうした内容を明確に言った。

 ―今後の日朝関係の進展について

 北京での予備会談は、朝鮮アジア太平洋平和委員会スポークスマンが7月に発表した在朝日本人女性の故郷訪問に関する談話を受けて、政府間交渉再開のきっかけにしたいとの日本側の提案を共和国側が好意的に受け止めたと言える。交渉再開にあたって、共和国側はあくまでも90年の3党共同宣言の精神を基礎に、95年の4党合意書を踏まえて、現実的な話し合いをしたいとの意向だった。3党共同宣言は党間で結ばれたものだが、きっかけはその前年、竹下首相が日朝の不幸な歴史について「遺憾の意」を表明したことにある。当時の海部首相もこれを承認している。共和国側が、これを強調するのは、当然のことだ。また、橋本首相が「政府間交渉を先行させる」と言ったことを知っているので、政府、党どちらでもよいが早い時期に与党訪朝団も受け入れ、仕上げをしたいとのことだ。

 今日本側が成すべきことは、日朝の友好関係を早く築くように努力することだろう。その事は会談の中でも再三強調された。そのためには過去の清算が不可欠だ。共和国側はこの問題を政治道徳の問題だとみている。国交正常化交渉を再開し、その過程で友好関係を確認し、早急に政治、経済、文化、人事の交流を積み重ねることが大事だ。多くの社民党の地方活動家らをはじめ訪朝団を受け入れ、日朝の友好促進を計っていくことも確認し合った。