国連人権小委に総聯代表が参加/朝鮮学校への差別訴える


大きい国際社会の反響/「戦争責任未解決が原因」、「人権侵害、外交的圧力を」

 ジュネーブで行われた国連人権委員会第49回差別防止少数者保護小委員会に、在日本朝鮮人人権協会の尹東煥事務局長、東京朝高建設委員会の鄭吉明幹事ら総聯代表が参加し、日本政府による朝鮮学校への差別の現状を訴え、是正を求めた。植民地統治時代の加害者と被害者との関係が、その子孫の代に至っても解消されていない現実についての訴えは、国際社会に大きな反響を巻き起こした。(仙)

まず過去清算を

 総聯代表は8月11日に鄭幹事が、12日に尹事務局長が発言。朝鮮学校卒業生に大学受験資格が認められていない問題、ほかの日本学校と違い税制面の特恵措置から排除されている問題、朝鮮学校の生徒への悪質な嫌がらせが相次いで起きている問題などについて言及した。

 そして、在日朝鮮学生が日本の学校に通うことを強いる状況を作り出している文部省の政策は、同化政策であり、植民地統治下で行われた民族抹殺政策と何ら変わらないと指摘。国連人権高等弁務官が実態を調査し、日本に相応の勧告を行うよう求めた。

 こうした訴えに対する各国政府代表、NGO代表らの反応は、予想以上に敏感かつ大きいものだったと言える。

 ヨーロッパで活動するカトリック団体、パキルクリスタルの代表は発言の中で、総聯代表が述べた内容に言及し、朝鮮学校の置かれた状況は人権侵害に当たるものだと言明し、日本政府を厳しく非難した。

 また米国に本部を置く国際教育開発(IED)のカレン・パーカー国連代表は、この問題の原因は日本が戦争責任を果たしていないことにあると断じたうえで、日本が過去を清算し差別を撤廃するまでは、安保理の常任理事国入りに徹底して反対していくと指摘。イギリスのNGO、アクション・フォー・チルドレン代表、グラハム・セント・ウィリー牧師は、在日朝鮮人への差別是正を求めて「日本に外交的な圧力を行使するよう、英国政府に働きかけたい」と話していた。

断固たる姿勢

 日本政府に対するこうした厳しい姿勢の背景には、人権尊重の理念の普遍化に向けて国際社会が数多くの課題を抱える中で、「先進国」日本が世界の潮流に逆行する事態はとうてい看過できない、との断固とした考えがある。

 日本は来年に予定されている人種差別撤廃条約の審査委員会で、同条約の順守状況のチェックを受けるが、特別審査委員であるオランダの国際法学者、テオ・ファン・ボーベン氏は「朝鮮学校の代表が必ずこの席に参加し、発言すべきだ」との考えを明らかにしている。

 ほかにも、多くの国際法専門家が国連は朝鮮学校の問題に優先的に取り組むべきだと指摘するなど、この問題を重視する空気が、関係者の間で広まりつつある。

 今後この問題が、子供の権利条約審議委員会、国連少数者保護作業部会、ユネスコなどで提起されれば、国連が日本政府に対し差別是正の勧告を行うことも考えられるだろう。

 しかし一方で、こうした国際社会の深刻な問題提起が、日本社会の中には十分に持ち込まれていないのも現実だ。日本社会が、自らが国際社会でどのような立場にあるのかを認識したとき、現状を変えて行く主導的な力も生まれてくるだろう。

 国際社会への訴えと、そこで得た反響を日本国内に十分に広めていくことが、朝鮮学校の権利を守る運動での1つの課題と言える。