ここが知りたいQ&A

民団の「参政権運動」に批判が高まっているが


在日同胞の総意ではない/地方議会では対応見直しも 基本的人権とは区分

Q 民団は在日同胞を含むすべての「定住外国人」が、「参政権」を望んでいるかのように主張しているが。

 最初にはっきりさせておくべき問題は、「参政権」は決して在日同胞や「定住外国人」の総意ではないということだ。

 民団の主張は在日同胞と日本人を欺くものだ。総聯ははっきり反対している。1世同胞はもとより、21世紀を担う若い世代の多くも「参政権」よりも民族教育などの民族権利の保障が重要と言っている。

 「在日韓国民主統一連合」をはじめ「韓国」系の同胞団体や、総聯と主張を異にする多くの同胞有識者も、それぞれの立場で反対もしくは慎重、時期尚早との否定的立場だ。民団同胞の中にも否定的な人は少なくなく、とくに民団中央の幹部に不平を抱く人ほど「参政権運動」に消極的だ。

 「中国政府の華僑政策は、現地の政治活動結社には一切参与せず、自分の権益を守りながら現地の人たちと友好的に対していく、というのが基本方針なんです」(東京華僑総会の劉俊南副会長)などと、他の「定住外国人」の多くも決して「参政権」を求めているわけではない。

 民団は「参政権」は「基本的人権」であるかのように主張しているが。

 民団はあたかも指紋押捺撤廃運動や年金問題などと同じような「人権問題」「権利問題」のような幻想をまいている。これは人々の目を眩ませる一種のトリックで、法的性質の違う基本的人権と参政権を意図的に混同させているのだ。しかし国際人権規約や世界人権宣言などでは「参政権」と基本的人権は明確に区分している。

 日本人士や地方議会でも対応の見直しの動きがあるが。

 日本人士の間からは、「参政権」が「基本的人権の伸長と民族差別の撤廃に貢献するとの認識は一面的で誤りだった」とか、「内政干渉につながり、これまで築いてきた日朝間の良好な関係に亀裂を生じさせる」などの声が出ている。

 「参政権」付与を決議した地方議会でも、決議の見直し、白紙に差し戻そうとする動きもある。善意にせよ一部の意見を「総意」と誤認した決議だったと認めたからで、「指紋押捺問題と同様な人権問題との認識は間違っていた」「反対意見を聞くべきだった」との認識からだ。

 とくに熊本県荒尾市議会は6月の定例議会で、過去の「参政権」決議は本来の意向とは違うものとして白紙撤回する決議を採択した。これは他の地方議会にも影響を及ぼそう。

 在日同胞が差別是正と民族的権利を求めていこうとする時、日本社会に対してどのような立場を堅持すべきなのか。

 何よりも内政不干渉の立場と姿勢を堅持することだ。この姿勢を貫いてこそ在日同胞の権利と生活問題が政治的利害を越えて、日本人自身の国民的課題として提起される。

 日本の人口の0.6%に満たない在日同胞が特定政党に頼ったり、数の論理が優先する選挙で民族権利を擁護しようとするのは幻想に過ぎない。これまでの経験は在日同胞の団結した力と日本国民の支持が1つになった時に初めて権利擁護でも成果が得られることを示している。