喪明け後の共和国の政策 金正日書記の著作を読む(9)


外交理念/自主性前提とした国際化/資本主義主導の「一体化」に警鐘

互いに支持・協力

 共和国ではどのような理念のもとに対外関係を推し進めようとしているのか。それを知るには、6月19日に発表された「革命と建設において主体性と民族性を固守するために」が参考になる。金正日書記はこの中で、世界の「一体化」ではなく自主化・民主化を達成しなければならないという理念を提示した。

 国際的連帯と団結は自主性を志向する国家間、民族間で互いに支持し協力する関係だ。だがその関係も国と民族の自主的発展が保障され、自主性が互いに尊重される時にのみ強固なものとなる。

 自主化と国際主義は決して矛盾しない。というのも、人類は民族や国家を構成部分とする統一体であり、それぞれの国家が自主的に発展してこそ、諸国間の交流と協力を強化することができるからだ。

 世界の多くの民族が政治的独立を達成した歴史が浅く、民族および国家間の経済水準や政治的、文化的水準に一定の差が存在する条件のもとで、人類が単一の共同体を形成するのにはまだ多くの時間を要する。

 したがって、現時点では、自主性を前提とした国際化が推進されるべきだ。逆に言えば、民族や国家の自主権や自主的発展を無視あるいは軽視し、国際化のみを一面的に強調するのは非現実的だ。

市場経済化を批判

 そういった観点から、書記は最近強調されている世界の「一体化」について、帝国主義者らによる奇弁だと批判している。というのも、資本主義主要国の言う世界の「一体化」とは、全世界を「西側式自由世界」に作り上げることだからだ。

 先進資本主義諸国の狙いは市場経済を世界的範囲で広めることだ。

 資本主義が発展する過程で市場の奪い合いが激化し、そのため、先進資本主義諸国はこぞって新しい市場の開拓に走る。必然的に今まで市場経済を行っていなかった所に新しい市場を求めることになるが、そのターゲットが発展途上諸国、社会主義諸国だ。

 市場経済を世界的範囲で広めるために、資本主義諸国はその政治的支柱である「自由民主主義」を広めようとする。

 だが、弱肉強食の市場経済が世界的に横行すれば、その競争で勝利するのは大資本であり、大国だ。これが世界の「一体化」だとすれば、弱者は淘汰され、結局犠牲になるのは小国である。

 そのため、市場経済と「自由民主主義」の世界化に書記は警鐘を鳴らしている。そして、自主権と平等、正義と公正性に基づいた国際秩序を樹立しなければならないとしている。

 そこでは支配に対する自主、暴力に対する平和、対決に対する親善を理念としなければならない。これは共和国が建国当初から掲げてきた外交理念である。

 最近の朝米、朝・日関係を見ても、まさにこの理念に基づき進展していることがわかる。

 金日成主席の喪明け直後、7月13日付で在米僑胞ジャーナリストに送った書簡で、書記は米国との関係において、共和国の外交政策の理念と活動原則に沿って合意事項を履行していくと指摘しており、日本との善隣友好関係を結ぶ立場も一貫していると強調している。(聖)