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AFCアジアカップを振り返る 朝鮮代表として参加 金鍾成 朝大サッカー部監督

戦術変更がチームにマッチ

 サッカー朝鮮代表が1月7日から29日にかけてカタールで行われたAFC(アジアサッカー連盟)主催のアジアカップに出場した。グループリーグでUAE(アラブ首長国連邦)に0―0、イランに0―1、イラクに0―1とし、1分2敗の成績で決勝トーナメント進出を逃したものの、昨年44年ぶりに出場したW杯南アフリカ大会後の経験を生かし、チームは今大会で新たな戦術に挑んだ。代表コーチとしてチームに帯同した朝鮮大学校サッカー部の金鍾成監督(在日本朝鮮人蹴球協会副会長)に話を聞いた。

−昨年のW杯以降、A代表として初めて臨んだ今大会の位置づけは。

初戦のUAE戦では、安英学、梁勇基、鄭大世選手が先発出場した(提供=在日本朝鮮人蹴球協会)

 チームとして経験を積む、自信を持つ、新たなシステムに挑戦するの3点に集約できるのではないだろうか。

 これにより、スタッフを含め今後海外での公式戦なども多くこなし、経験を蓄積していこうというチームの方向性を感じた。

 今年9月に始まる2014年ブラジルW杯のアジア3次予選(10年南アフリカ大会アジア予選上位は3次予選までシード)という「本番戦」に備えようというものだ。

−戦術の変化があったか。

 世界で通じる部分、まだまだ足りない部分をチームとして明白にしようとしている。

 とくに今回、チームはボールの出所に積極的に密集し、ディフェンスを仕掛けていた。

 イラン戦で見せた全員が連動するサッカーは、朝鮮チームにマッチしていた。とくに、一人がディフェンスに向かったとき、もう一人もポジションを崩しディフェンスに入る。さらに空いたスペースを埋めていくことで、スムーズなポジション移動のオートメーション化が実現し、4―4―2(以前は5―3―2)のシステムへの理解をチーム戦術として浸透させようとしていた。

 これまでは一人がディフェンスに行っても素早いフォローがなかっただけに、ボールの奪いどころ、ポジショニングを素早く決め、攻撃に移っていく理解力が、とりわけ目を引いていた。

−W杯に向けた目標は。

 今回のアジアカップを通じ、2014年のブラジルW杯に向け、朝鮮チームはスタートを切ったという印象を持った。とくに昨年のW杯以降、朝鮮チーム全体の雰囲気が変わったように感じる。

 サッカーのスタイルも変化した。とくに「守り、カウンター」という低いDFラインからスタートするスタイルから、チームのシステムを4―4―2に変えたことで、より攻撃的なサッカーを目指している印象だ。

 朝鮮が攻撃的なチームへと変貌を遂げるスタートを切ったように思う。

 「W杯出場」だったこれまでの目標は、「W杯でどういうサッカーをするか」というものに広がった。アジア予選突破は前提だということだ。それは昨年、44年ぶりのW杯出場がもたらした貴重な経験によるものだ。

−在日3選手の役割は。

 今回、朝鮮チームに召集された安英学、梁勇基、鄭大世選手がUAE、イラク戦でスタメン出場を果たした(イラン戦では梁選手が途中出場)。在日同胞選手が3人同時にスタメン出場を果たしたのは初めてのことだった。

 安英学選手はチームのスタミナが厳しい時間帯でも中心的な役割を果たしていた。朝鮮のサッカースタイルに合うばかりか、チーム内のコミュニケーションを高める上でリーダーシップを発揮していた。

 シンプルなサッカーでチームに適応していた梁勇基選手は、チームがゴールへと向かう拠点から結論までに絡めることのできる選手。知性に富んだボールさばきで、ゲームの流れを作れるという点でチームに新たな風を吹きこませた。

 点をとれるFWとしてチームの戦術を支えた鄭大世選手は今回、万全なコンディションではなかったが、新たなポジションのシステムに適応したためか、以前よりもパスが多く回ってくると本人も話していた。

 在日同胞選手らはあらゆる戦術の変更に、しっかり適応していた印象だ。(李東浩)

[朝鮮新報 2011.2.9]