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朝大ラグビー部 李鍾基監督 朝高ラガーマンは「宝」

 第90回の記念大会となった今大会は、東福岡、桐蔭学園の両校優勝で幕を閉じた。大阪朝鮮高級学校は、両校と並んでAシード(残りは流経大柏)に選ばれ、優勝候補とうたわれるに相応しい活躍を見せた。

 とくに、チームのキープレーヤーの負傷という逆境を乗り越えて臨んだ準々決勝(1月3日)の流経大柏戦は、15人が一体となった展開ラグビーと伝統の強いタックル、ゲーム理解力とコンビネーションの高さが存分に発揮される圧巻の内容だった。

 前回大会と同じカードとなった準決勝の桐蔭学園戦は、朝高の試合内容も良かったが、桐蔭学園が準々決勝での辛勝を糧に、素晴らしいゲームを繰り広げた。大阪朝高は、先制点のドロップゴールから始まり、ペナルティーキックからの意表をつく展開攻撃などに翻弄された。また、それまでの試合とは異なるキック主体のゲームプランで、徹底的に陣地の獲得を仕掛けてくる桐蔭学園に対して、エリア的に劣勢を余儀なくされ、ボールの争奪で予想以上に朝高のフォワードがプレッシャーを受けたことが敗因として挙げられる。

 とは言え、今年の大阪朝高ラグビー部は本当に強かった。

 年間を通して主将の戦線離脱や、大会期間中のキープレーヤーの負傷などのアクシデントの中でも、チームが一丸となって仲間を信じて互いに責任を全うし、「全国制覇」まであと一歩のところまで登りつめた。

 それは、東大阪朝鮮中級学校時代に近畿大会決勝まで勝ち進んだ、才能豊かな選手らが全員大阪朝高に進学し、呉英吉監督のもとで日々研さんしてきた成果だと言える。また、昨年のチーム同様、高校生として学校生活にはつらつと取り組む姿勢や、周囲の人々への感謝の気持ちが、2年連続「全国ベスト4」という大きな成果に結びつく原動力になった。

 フォワードとバックスの一体となった超攻撃ラグビー、ハーフ陣(9番の梁正秋選手、10番の朴成基選手)のゲームメイクもうまかった。大会屈指のプレーヤーだった権裕人選手(13番)、金寛泰主将がケガで試合に出られない間もゲームキャプテンとしてチームを引っ張った金勇輝選手(12番)、トライを量産し、スケールの大きなプレーを見せた南宗成選手(5番)や趙誠慶選手(8番)と注目選手も多かった。

 「全国大会」のような短期決戦で結果を出すには、次のようなことが今後の課題として挙げられるのではないか。

 まずはメンタルタフネスだ。今大会で上位校からも見受けられた、試合ごとの浮き沈みをいかにコントロールしていくかということと、試合中にいかなる逆境に立たされても決して慌てることなく、「自分たちは大丈夫、最後には勝つ」と信じきる「強者の姿勢」だ。

 そして、今大会で桐蔭学園が見せたように、対戦相手に応じて自在にゲームプランを変える能力が求められる。同校は大阪朝高戦と次の決勝戦でゲームプランをガラッと変えてきた。これは決してたやすいことではない。そういった適応力も今後求められる。

 常に最終勝者が1人(1チーム)と限られているスポーツにおいて、運が勝敗を左右することも少なくない。時には敗戦を経験した者のほうが大きなものを得られることもある。大阪朝高は今回の成果と教訓を糧にして、よりいっそう成長するだろう。

 大阪朝高の活躍が各地の同胞に与えた感動の大きさは計り知れない。「全国大会」という舞台で意気揚々と走り回る彼らの姿、必死に声援を送りサポートする朝高生や同胞の姿から、在日同胞としての、そして朝鮮人としての「誇り」を体感できた。

 最後に、朝鮮大学校ラグビー部にとって、朝高ラガーマンたちは文字通り「宝」だ。大阪朝高やラグビー部がある4つの朝高、そして他校からも一人でも多く朝大に進学し、日本で唯一の「同胞大学ラグビー部」でともにプレーすることを願っている。またそういった環境づくりをしていくことが、自分自身の責務だとあらためて感じた。

[朝鮮新報 2011.1.19]